敏腕パイロットは空の上のシェフを愛す~愛おしい双子を添えて~

どこかで聞いたことのある名前に、花梨はさらに胸をざわめかせる。
思い出そうとするのに、靄がかかったように記憶がはっきりしない。
すると璃子は、一際低い声で花梨に告げる。

〈久登さんと、昔からの付き合いみたいで……誰が見ても狙ってるって感じ。ケータリングスタッフとはあまり接点がないから大丈夫だとは思うけど、一応、気をつけて〉

「そうなんだ……教えてくれて、ありがとう」
直接危害を加えられるようなことはないと、さすがに信じたい。
だが、言葉の棘くらいは向けられるかもしれない。

(もし何かあったら……久登さんに、ちゃんと相談しなくちゃ)

そう心に決めたところで、璃子の声の調子が少しだけ変わった。

〈……でね。そろそろ本題に入りたいんだけど、大輝と大翔って、まだ飛行機、好き?〉

「もちろん。全然大好きだよ。ずっと飛行機の模型で遊んでるんだから」

花梨のすぐそばのソファで、ふたりが小さな手で大事そうに抱えているのは、久登が普段乗務しているボーイング787の模型だ。
白い機体に長く伸びた翼は、空港で見かけたあの姿と同じ形をしている。
それが、ふたりの一番お気に入りのおもちゃだった。

「びゅーん。787が、とびまーす!」
「ぼくもとぶー!」

無邪気に言葉を交わしながら、滑走路をなぞるように床を走らせるふたりを見て、花梨の頬が自然と緩んだ。

(この飛行機にパパが乗ってるって知ったら、ふたりはどう思うのかな)

早く久登に会わせたい気持ちと、ふたりの心を急に揺らしてしまう怖さ。
そのどちらもが、花梨の胸に重なっていた。
そんなことを考えていると、電話越しの璃子の笑い声に意識を引き戻された。

<可愛いねぇ、ほんと元気そう。声だけで癒やされる>

電話越しに、璃子が楽しそうに笑う。

<でさ、来週末に羽田で子ども向けのイベントがあってね。実は私、その担当に入ることになったの>
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