君の言葉で夢を見たい
自分の部屋に戻ると、さっきまでの賑やかさが嘘みたいに、シンとしていた。
ベッドに突っ伏して、適当にスリッパを脱ぎ捨てる。
明日の朝、寝起き一発目に「スリッパどこ?」ってイライラすることはわかっているのに、起き上がって整えるのはめんどくさい。
ベッドの下の隙間に入っていなければいいや……。
それからごろん、と寝返りを打って、オレンジ色の照明をぼんやり眺める。
……眠くない。
昼まで寝ていたツケがこんなところで回ってくるとは思わなかった。
だからといってスマホをいじる気にもなれない。
余計に目が冴えそうな気がする。
間接照明だけがぼんやりと灯る部屋で、僕はむりやり目を瞑った。
聞こえてくるのは、天井に埋め込まれたエアコンの音と、加湿器の控えめな稼働音。
そして、自分の心音だけ。
「……。」
部屋が静かすぎると、いろんなことを考えてしまう。
この東京の街には何千万人もの人がいるはずなのに、今、起きているのは僕だけなんじゃないかと思った。
そんなことが頭をよぎるくらい、30階の高さにあるこの部屋は、外の音も届かないほど静かだった。
そんな夜のしじまに、ベッドの上で、ふと、あの声を思い出した。
電話越しに聞いた、あの声。
――英語の時の、しなやかな声も好きだったけれど。
どちらかと言えば、日本語の時の、羽毛布団みたいにふわふわと柔らかい声の方が好きだった。
……好きだった?
なんか、変な言い方だな。
自分の頭の中に浮かんだ単語が少し可笑しくなった。
寝返りを打って、目を閉じる。
そして、ひんやりとした布団とシーツの間に体を滑り込ませた。
僕の肌に触れたシーツがじんわりと熱を持ち始めて、新たなひんやりを求めて体を捻る。
日本語と英語で声色が変わるなら――韓国語を話す時はまた、違う声なのかもしれない。
……どんな声なんだろう。
僕の言葉を話す彼女の声は。
そんなことを考えているうちに、眠れないと思っていたはずなのに、ゆっくりと瞼が重くなってきた。