君の言葉で夢を見たい
ようやく手繰り寄せたその声の柔らかさが、徐々にはっきりする意識と入れ替わるように再び薄まっていく。
だけど夢にしては、やけにはっきりと声の印象がしっかりしている。
羽毛布団のように柔らかくて、ふんわりと温かい声。
まるで最近、どこかで聞いたことのあるような――
――あ。
昨日の電話の人。
そう気づいた瞬間、夢の輪郭が少しはっきりした。
そうだ。
その声と僕は夢の中で何かを話していた気がする。
でも姿まではうまく思い出せない。
そもそも現実の僕が声の持ち主の顔を知らないんだから、夢にはっきり出てくるはずがないか。
だけど夢の中の彼女が『昨日の電話の女性』だとわかるのは、あの羽毛布団みたいな声を覚えているから。
夢の中の声の主までは思い出せたのに、その内容はまるで思い出せない。
それどころか夢の中でも僕は、彼女の言葉の意味はわからなかった気がする。
ただ、あの柔らかい声に包まれながら、その意味が理解できない自分にがっかりしていた感覚だけがじんわりと残っている。
寝起きで重たい瞼をうっすらと開けた。
閉じた遮光カーテンの隙間から、白い光がコンサートのレーザー演出みたいに天井と布団の両方に伸びていた。
……夢の中ですら日本語がわからないだなんて。
ピーターパンみたいに空を飛んだり、アベンジャーズみたいに戦う非現実な夢を見ることは出来るのに。
なんで日本語のレベルは現実と一緒なんだよ。
そこは夢なんだから都合よくしてくれてもよくないか。
……夢のくせに、夢がないな。
せめて夢の中でくらい彼女の言葉を理解させてくれよ。
そんなことを思いながら体を起こした。
一昨日のコンサートの疲れがまだ残っているのか、体がギシギシと音を鳴らす。
顔を動かすたびに、頭のてっぺんで髪がふわふわ揺れている感覚があった。
寝癖で跳ねた髪をぐしゃぐしゃと適当に整えながら、ベッドサイドのボタンを押す。
ウィーンと機械の音がしてカーテンが自動で開いた。
レーザーのように伸びていた細い光の線がウィーンという電子音と共に太くなっていく。
それと同時に窓から入ってくる日の光に目を細めながら「お腹すいたな」と胃のあたりをさすったとき、いいことを思いついた。
そうだ、朝食のルームサービスを頼もう。