君の言葉で夢を見たい
ホテル生活中はルームサービスを使うことが多い。
だから、ルームサービスを頼むこと自体は珍しくない。
ただその動機が若干、不純なだけで。
……って、いや、言うほど不純か?
ただ、夢に出てきたあの声のオリジナルを確かめてみたくなっただけ――やっぱり不純か。
理由は何にせよ――ルームサービスを頼むことは宿泊者である僕の権利だ。
そう開き直って昨日と同じ内線番号を押した。
ぷるる、ぷるると呼び出し音。
『おはようございます。ベルデスクのジェシカでございます』
……違う人だった。
しかも日本人じゃなかった。
日本語ネイティブではない僕でも、発音とイントネーションで日本人じゃないとわかる。
さすが世界中に展開しているホテルだなと感心しつつ、僕の日本語も昨日の彼女にはこんなふうに聞こえていたのかもな、と思った。
「ブレックファスト、ルームサービス、おねがいします」
『かしこまりました。レストランにお繋ぎします』
そんな言葉を残して、電話は保留音が鳴った。
すぐにガチャリと電話が繋がり、さっきとは違う声が聞こえてきた。
『お電話代わりました。ラウンジ&ダイニングCOAST、山田でございます。ベルデスクよりご朝食のご依頼と伺っております』
その長い日本語に、僕はまた息を詰まらせてしまった。
僕は諦めて英語に切り替える。
「Excuse me, Could we speak in English, please?《すみません、英語でもいいですか?》」
そうして結局僕はまた、英語でルームサービスの手配を済ませた。
日本語は話せる方だと思っていただけに、地味にショックだった。
だけど思い返してみれば、僕が話せる日本語って「叫べー」とか「一緒に!」とか――ライブでしか使わない語彙ばかりだ。
自分の日本語能力を過大評価していた、なんてことに、こんなことで気がつくなんて。
ただ、朝食を頼みたかっただけなんだけどな。