君の言葉で夢を見たい

- 君の言葉で夢を見たい -



車で事前に受け取っていた木製のカードキーを、半年前と同じ3001号室のドアに当てる。

ピピッと小さく電子音が鳴って客室のロックが外れた。



ノブを手前に引いて扉を開けると、カーテンが自動で開いた。

それと同時に薄暗かった部屋に夕日が射す。



スーツケースを脇に置いて靴から備え付けのスリッパに履き替えた。


そして荷物も開かずに、ピンとシワひとつなく整えられたベッドにぽすんとうつ伏せに倒れ込む。

清潔なリネンの香りを肺いっぱいに吸い込んでもまだ、心臓がドキドキと音を立てていた。



ごろんと寝返りを打って仰向けになる。

相変わらずシミひとつない白い天井は、夕日の色に染まっていた。



ベッドの上部に揃えて置かれた四つの枕のうち、一つを掴んで引き寄せる。

そのまま抱き枕みたいに胸に抱くとぎゅっと顔を押し付けた。




まだ耳の奥に、彼女のころころとした声が残っている。

枕に回した腕にぎゅっと力が入った。



日本語とも英語とも違う、僕の言葉を話す彼女の声――。


いつもより少し自信がなさげで、日本語の響きをわずかに残した発音が、可愛らしかった。


それを思い出してまた頬が緩んでしまう。




彼女が半年前の僕を覚えてくれていたことも、彼女の方も韓国語を勉強していたことも。

それだけのことで、この半年間が僕の中でだけ意味があったものじゃなかったみたいに感じた。


……もしかして、僕との会話がきっかけだったりして。


そんな都合のいい考えが浮かんだだけで、抱き締めた枕にまた力が入る。

さすがに思い上がりすぎだと思うのに、緩んだ頬はなかなか元に戻ってくれなかった。


この気持ちをどうにか外へ逃がしたくてベッドの上をゴロゴロと転がりたくなるのを堪える。


誰に見られているわけでもないけれど、浮かれている自分が可視化されるのは恥ずかしかった。



その代わりに、枕を胸に抱いたまま、彼女の声によく似た布団に包まれて瞳を閉じる。


横たわった僕を、ベッドは優しく受け止めてくれた。

それが合図だったみたいにふわりと眠気が襲ってきた。



まだこの余韻に浸っていたいのに……。


そんなことを思いながら眠気に身を任せる。




半年ぶりの彼女は――。




そこで、ふっと思考が止まった。

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