クールな年上彼女は焼酎がお好き


「お酒……飲まないんですか? さっきから全然減ってないじゃないですか」
「あ……うん。度数高いし、もうやめとこうかなって」
「全然顔色変わってないのに? お酒が好きで、たくさん飲むって聞きましたけど」

 頼子さんが痛いところを突かれたという顔をした。その表情に僕は泣きたくなった。なんだかアルハラでもしている気分だ。

「すみません。僕の前で酔うのが嫌なんですよね、分かってます……。でも僕って、そんなに頼りないでしょうか。これでも、彼氏なのに……」

 こんな女々しいことを言うはずではなかったのに、僕はかなり酔っていたみたいだ。感情が昂って涙まで滲んできて、泣き上戸ってやつかもしれない。
 頼子さんは黙り込んだまま、その瞳に戸惑いの色を浮かべていた。とても困らせている。分かっていたのに、口からはひとりでに言葉が流れ出ていく。

「全然気を許してくれないし、会わなくても平然としてるし――頼子さんは僕のこと、ほんとはちっとも好きじゃないんでしょう」

 これは決定打。言ってはいけないことだ。けれど、感情が坂道を転がるように落ちていって、コントロールできなかった。
 頼子さんがショックを受けたように目を潤ませた。

「そんなふうに、思ってたの……?」
「だって、そうじゃないですか! いつまでも他人行儀で、クールで……こうして二人きりで会っても、会社にいるときと全然変わらない……っ」

 こんなふうに相手を責めるのは、間違っている。
 そもそも交際を押しきったのは僕じゃないか。お試しでもいいって、好きにならなくてもいいって言ったのは僕だ。頼子さんに非はない。勝手な期待を押し付けるほうが悪い。
 だからこれは、完全に僕の一人相撲。

「……頭、冷やしてきます」

 バッグをつかみ、つかつかと玄関に向かった。ドアノブに手をかけたとき、「待って」と声がかかった。

「その、違うの、私……ごめんなさい……」

 揺らいだ声音。頼子さんはなにかを伝えようとして言葉を探しているみたいだ。肩越しに振り返ってみれば、ひどく狼狽えた彼女がいた。
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