クールな年上彼女は焼酎がお好き
「えっ」と僕は目を見開いた。
もしかして先ほどの微妙な反応はそれ?
安堵のあまり全身から力が抜ける。へなへなと背もたれに寄りかかった僕に頼子さんが気遣わしげな顔をした。
「もう酔いが回っちゃった? お水もってこようか」
「まだ大丈夫です……。あ、でもお水はお願いします」
すぐに差し出された冷たい水で喉を潤した僕は、気がかりが消えてすっかり晴れやかな気分だった。そこからは、手料理のちゃんこ鍋をつつきながら、心置きなく会話に興じることができた。
頼子さんも心なしかいつもより饒舌で、ダバダ火振をとっかかりにした話題は、プライベートのこと、家族や友人のことと徐々に広がっていく。知らなかった彼女を知るたびに、少しは距離を縮められたかな、なんて胸を弾ませた。
鍋の味付けは塩気がちょうどよくて、焼酎によく合っていた。お酒はちょっと強かったけれど、ゆっくりめのペースでチェイサーを挟んでいれば気持ちのいい酔いが全身を包み込む。そして目の前にいる頼子さんも、同じように気分よさげに過ごしてくれているのがこの上なく嬉しかった。
箸や取り皿を扱う彼女の所作はやっぱり一ミリの乱れもなくて、隙を見せてはくれないけれど――。
とそこで、あることに気がついてしまった。しばらく前から頼子さんのグラスがちっとも減っていないのだ。最初は二人とも同じくらいのペースだったのに、いつの間にやら僕ばかりが杯を重ねていた。
言動にも顔色にも変化は見受けられないから、飲みすぎたわけではないと思う。酒豪という話が真実なら、彼女にはまだまだ余裕があるはずだ。
なのに、どうして飲むのをやめたのだろう。
――やっぱり僕は、信頼されていない?
楽しい気分がみるみるしおれていった。
「どうしたの? やっぱり気分悪くなった?」
頼子さんがすぐに気づいて心配してくれる。本当に冷静そのもの。仕事をしているときとなんら変わらない。
僕はふるふると首を横に振り、じっと彼女を見つめた。