クールな年上彼女は焼酎がお好き
違うってなにが?
その「ごめんなさい」はなんの謝罪?
後ろ向きな想像ばかりが思い浮かんでしまう。答えを知りたくなくて、僕はとっさに逃げた。
「待って! 話を聞いて、オミくん!」
普段の冷静さを失った彼女が背後で必死に声を上げている。だけどそれらを振り切り、僕は部屋を飛び出した。最後に聞こえた呼び名すらまともに理解しないまま、共用通路を突っ切って階段を駆け下りた。
心臓がばくばくしている。呼吸が苦しい。頭は酔いでぐるぐるしているし、胃はひっくり返りそうに気持ち悪い。
だけど足は止まらなかった。逃避したところで問題を先送りにするだけだって分かっている。それでも走って走って、通りを突き進んで、駅について、その端でようやく立ち止まり、壁に手をついた。
「う……」
吐き気が込み上げて、慌てて抑え込む。その場にずるずるとしゃがみこみ、全力疾走で荒れ狂う身体をなんとか鎮める。
時間が経つにつれて呼吸がだんだん楽になって、心臓や胃が落ち着いてくる。けれど、心の痛みだけはいつまで経っても治まらなかった。
自分の発言が頭の中で何度も何度もリピート再生される。
あんなの、駄々をこねる子供と一緒だ。なんであんなこと言っちゃったんだよ。今までの失敗なんか比べものにならないくらい酷い。
失望されただろうか。さすがに怒ったかな。……嫌われたかもしれない。
好かれていなくても、彼氏になれるだけで嬉しいと思っていたはずなのに。
「僕の馬鹿……」
落ち込む僕を慰めてくれる人なんて、ここにはいなかった。