クールな年上彼女は焼酎がお好き
 翌日、マントルよりも深く沈みこんだ心を叱咤して出勤した僕は、抜け殻状態でひたすらパソコンとにらめっこしていた。そこへやってきた教育係の主任が手にした書類を丸め、ぱこんっと僕の頭を叩く。

「……なんでしょう?」

 痛くもない頭をさすりながら、ゆっくりとした動作で振り仰ぐと、主任が呆れたため息をついた。

「お前、今日どうしたんだよ。いつもにこにこなのに無表情でさあ。淡々と作業してるから声掛けにくいぞ。悩みがあるなら聞いてやるから、仕事中はちゃんとしてろ」
「あ……はい。すみません」

 反省して、表情を和らげるように努めたけれど、心は曇ったままだった。
 あれから頼子さんには連絡していない。なにを伝えたらいいのか考えがまとまらないのだ。
 もしかしてこのまま僕がなにもしなかったら、破局を迎えるのだろうか。そう思うと悲しくなった。好きだったのは僕だけだから、自分が手放したら簡単に終わる関係なのだ。本当に一方通行の恋だったのだと今さら実感してしまう。
 でもひょっとしたら彼女からなにか言ってくれるかもしれない。そんな期待も実はほんのちょびっとだけあって、定時を過ぎたあたりからスマホが気になって仕方がなかった。
 案の定、連絡なんか入らなくて、僕は家でビールをあおっていたわけだけれど、どうしてか全然酔えなかった。
 おかしい、いつもなら缶ビール一本でいい感じに酔えるのに、もう三本目だ。意識ははっきりしている。

「ダバダ火振でも飲めば酔えるのかな」

 残念ながら、彼女の部屋に置いてきてしまったけれど。
 そのとき、テーブルの上に投げ出していたスマホがブブッと震えた。飛びつくように確認したら、彼女からのメッセージ……ではない。送り主は彼女の名前だけど、中身は先日飲み会で隣になった先輩からだった。借りたスマホから送信してきたらしい。
 いわく、『頼子がべろんべろんに酔っ払ってるので責任とって迎えにくるよーに!』とのことだ。
 とりあえず靴をひっかけて家を飛び出したけれど、頭の中は疑問符でいっぱいだ。
 べろんべろん? 彼女が? 想像できない。一体なにがあったのだろう。
 混乱しながら、教えてもらった店の場所に駆けつけた。
< 12 / 18 >

この作品をシェア

pagetop