クールな年上彼女は焼酎がお好き
僕の二、三歩前を機嫌よさげな頼子さんが軽い足取りで歩いている。
手を捕まえているから安心して見守っていられるけど、酔っ払った彼女はまるで警戒心がなくてなんだか危なっかしい。
時折振り返っては僕の顔を見てにっこり笑う。つられて僕が微笑むと、さらに嬉しそうにする。
こんな懐いているふうに接してもらうと、もしかして意外と心を開いてもらえてるんじゃないか、なんて勘違いしてしまいそうになる。きっと、酔っ払ったら誰にでもこうなんだと考えて、もう下手な希望は持たないようにした。
すると、いつの間にか隣に戻っていた頼子さんがじっと僕の顔を見て、つんつんと額をつついた。
「眉間にシワできてるよ。悩み事?」
どうやら胸の内が表に出てしまっていたみたいだ。
「うーん、ちょっと……」
ちらりと横目でうかがうと、心配げな表情は普段の歳上らしい雰囲気を少しだけ取り戻している。やっぱり別人ではないんだと当たり前のことに安堵した。
「どうしたの? 聞くよ?」
そんなふうに訊ねる頼子さんは、酔いのせいで昨夜の出来事など忘れているのかもしれない。
僕が悩んでいるのはあなたのことですよ。
少し意地悪な気持ちになって、言うつもりのなかった言葉が口をついた。
「僕のこと、好きですか?」
いや、だからってこれは酔った相手に聞くべきじゃない。
でも僕はずっと不安で、もう限界だったから。
頼子さんは即答した。綺麗な微笑つきで。
「好きだよ」
桃色の唇がその言葉を紡いだ途端、たまらず僕は細い身体を抱きしめていた。加減ができなくて、腕の中から微かな悲鳴が上がる。少しだけ力を抜いた僕は小さな頭に頬ずりした。
なんかもう、これだけでいい。頼子さんが好きだって口にしてくれた事実だけで満足。酔っ払いの戯れ言だってかまわないんだ。
そう思ってしまうほど、僕の精神は参っていた。
ぎゅっと隙間なく身体をくっつけたら、彼女もおずおずと背中に手を回してくれて、触れ合ったところからちょっと駆け足な鼓動が伝わる。
熱いと思っていた頼子さんの体温はいつの間にか僕にも移って、二人で寄り添っているのがとてもとても気持ちがよかった。
彼女が応じてくれたことに舞い上がって、どうせならもっと気持ちよくなりたいなんて、浅ましいことを考えてしまう。
不埒な欲求に突き動かされた僕は、さっと抱擁を解くと彼女の手をつかんで二人きりになれる場所を一心に目指した。
頼子さんの部屋に帰りついたその足でベッドに直行する。
口付けを交わし押し倒したところで、はっと思い出した。