クールな年上彼女は焼酎がお好き




 腕の中の温もりが身動きする気配を感じとって、僕の意識はまどろみから浮上した。

「――そっか、昨日オミくんと……」

 ぼそぼそと聞こえるのは多分、頼子さんの独り言。
 彼女の声で目覚めることができるなんて、なんという贅沢。
 シーツにくるまったままの僕は、目を閉じてぼんやりとその声に聞き入っていた。

「オミくん、昨日の私をどう思ったかな。これからどっちの態度で接したらいいんだろ……」

 耳にした内容にどうも引っ掛かりを覚え、寝ぼけていた僕の頭は徐々に覚醒していく。
 どっちというのは、普段のきちんとした頼子さんと、昨日のゆるゆるな頼子さん?

「――そもそも、どっちの頼子さんが本当なんですか?」
「……っ、起きてたの?」

 起き上がりながら問いかけると、ベッドに腰掛けた彼女が驚いて振り返った。

「ちょっと前に起きたんです。で、どっち?」

 手をついてにじり寄ると、すごくためらいがちに「ゆるゆるなほう……」と教えてくれた。意外な答えに僕は目を見開く。

「昨日は酔いでふらふらしてた部分ももちろんあったけど、もとは結構のほほんとした性格なの」

 自分でもその表現が似合わない自覚があるのか、頼子さんは決まり悪そうだった。

「じゃあ、会社でのクールな頼子さんは?」
「あれは……自衛みたいなもの」
「自衛?」

 そう、と頼子さんは頷く。

「私って人を疑うことがあんまり得意じゃないみたいで、すぐ親身になりすぎるから……寄ってきやすいのよ。変な人が」

 つまり、生来のおっとりした性格が危ない人間を引き寄せてしまうから、やむなく表向きはしっかり者のクールな女性として振舞っているということらしい。大袈裟なようにも思えるが、実際に痴漢や変質者やストーカーに絡まれたことが多々あるというのだから深刻だ。
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