クールな年上彼女は焼酎がお好き
そうして迎えた次の日曜日、僕は購入したダバダ火振を抱えて頼子さんの自宅へと向かっていた。
初めてのお宅訪問にドキドキしながら呼び鈴を鳴らし、インターホンで「長谷部です」と伝える。すぐにドアが開き、エプロン姿の頼子さんが現れた。
「いらっしゃい。どうぞ上がって」
「……あっ、おじゃまします」
初めて見る格好に一瞬呆けていた僕は、あたふたと部屋に上がる。玄関からドア一枚隔てた先は広いリビングダイニングになっていた。白を基調に柔らかな色合いでまとめられていて女性らしさを感じる部屋だ。
「もう少しだから座って待ってて。寒くなってきたからお鍋にしてみたの」
ダイニングテーブルを指し示し、頼子さんはキッチンに戻っていく。それを目にした僕は心の中でガッツポーズを決めた。
家飲みの約束をしたときに「長谷部くんがお酒を用意するなら、食事は私が」と言ってくれてはいたが、本当に手料理が食べられるなんて幸せすぎる。
しかも、エプロンがとてつもなく似合っている!
身につけているのは飾り気のないネイビーのものだけど、普段がかっちりしたスーツなので、楚々とした空気が際立っていた。セミロングの髪はシュシュでサイドにまとめてあって、素敵な奥さんという出で立ち。これだけで今日来た甲斐があったというもの。
後ろ姿をこっそりじっくり堪能し、早々に満ち足りた気分になっていた僕は、鍋に向かったままの頼子さんがそういえばと口にした質問にはっとする。
「お酒がなにか聞いてなかったね。なにを持ってきたの?」
「あ、それが、その……焼酎、なんですけど……」
「焼酎?」
コンロの火を止めた頼子さんが振り返った。
「ダバダ火振っていう……あの、お好きだって聞いて……」
おずおずと彼女の表情をうかがう。気のせいか、にっこりした微笑がほんの少し強ばっていた。