ひとりが嫌で、今日も笑う。
フェンスにもたれかかって、空を見ている男の子。
制服は乱れていて、姿勢はだるそうなのに、存在感だけが鋭い。
……真城航斗。
その名前が頭に浮かんだだけで、心臓が跳ねた。
有名な暴走族“黒月”の総長、真城航斗。
学校中が恐れている相手。
私は反射で笑ってしまう。
「……あ、ごめんね〜?誰かいると思わなくて〜」
自分でもわかる。
今の声は、必要以上に明るい。
航斗は振り向かず、短く言った。
航「帰れ」
冷たい。
命令みたいで、背筋が凍る。
普通なら逃げる。
でも私は逃げられなかった。
逃げたら、また戻る。
あの教室の、作り笑いの世界に。
それも嫌だった。
私は笑顔を崩さないまま、屋上の扉をそっと閉めた。