転生令嬢は騎士からの愛に気付かない
3-1
 図書館の窓から見える空には清々しい青空が広がっている。
 風も穏やかで暖かく、日向ぼっこをするには最適な天候だ。こんな日は明るい気持ちで過ごせるはず──なのだが。

「ねえアシュリー、わたくしの話、ちゃんと聞いてる?」
「……え?」

 強めの口調で声を掛けられて、アシュリーははっと我に返った。途端に窓から入り込んでくる太陽の光や人の足音、人がいる気配を感じ始める。
 意識が現実に返ってきたことで思い出す。今は仕事中で、この図書館の常連であり、恋愛小説をこよなく愛する貴族の令嬢である彼女と世間話をしていたのだった。

 読書を趣味とする女性は増えているが、それでも未だに本を読むのは男であって、女が読むものではないと言っている者も多い。彼女の両親はそう言ったタイプの人で、欲しいと思っても購入することができないため、貴族でありながらもこうして図書館にひっそりと通っていた。
 アシュリーはどうやら彼女と会話をしている最中に、意識をどこかへ飛ばしていたらしい。
 ここのところは気候も安定していて、暖かい日が続いている。そんな日は気持ちが前向きになってくるはずなのだが、ここ数日の彼女は、こうしてぼんやりしていることが多かった。
 彼女から掛けられた言葉はどこか責めるような口調だったけれど、向けられた視線は心配の色を含んでいた。

「最近のあなた、どこか変よ。熱でもあるの? 怒らないからわたくしに教えて?」
「ご、ごめんなさい、全然……大丈夫、です、はい」

 もし近くに誰かいたならば話しをしていることで嫌味のひとつやふたつ言われそうだったが、幸い周囲には人影はない。だが、極力声のボリュームに気をつけるようにしながら、アシュリーは彼女の問いに答えた。

「なら、いいのだけれど……」

 そう言いつつも、彼女の表情は晴れていない。アシュリーは大丈夫だという意味を込めて、無理やりに笑みを浮かべた。
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