転生令嬢は騎士からの愛に気付かない
3-2
「ご無理はなさらず。また、溜め込み過ぎも体に悪いので、適度に発散することをお勧めいたします」
「ありがとう、ございます……」
「朝食のあと、体調不良に効くお薬を用意いたしますね。それから──」

 手に持った服──記憶が正しければ、それはアシュリーが昨日着ていたものだ──を手渡しながら、彼女は言った。

「ローウェル様が朝食を一緒に、と仰っております。お着替えが終わりましたら、ご案内致します。……お手伝い、致しましょうか?」
「い、いえ! 結構です! ひとりで、着替えられます!」

 ぶんぶんとアシュリーは首を左右に振る。
 彼女は、そうですか、と笑みを浮かべたまま、一礼して部屋を出て行った。
 手渡されたそれはやはり別人に着飾らされる前にアシュリーが着ていた服だった。綺麗に折り畳まれているし、洗剤のいい匂いがする。
 しばらく服を見つめていたが、我に返って着ていた寝間着を脱ぎ、まだ痛む体に時折悲鳴を上げそうになりながらのろのろと身に付けていく。
 着替え終わるのとほぼ同じタイミングで扉がノックされ、返事をすると入室の許可を問い掛けられたので大丈夫だと伝えると、侍女が顔を覗かせた。

「少し髪の毛触らせて頂きますが、宜しいでしょうか?」

 頷くとドレッサーの前に案内され、絡まっていた髪を梳かれる。そして普段は動きやすさ重視で軽く纏めるだけの髪を左右で編み込みを作って、後ろで編んでくれた。
 普段とは雰囲気の違う自分にアシュリーは驚く。

 では参りましょうか、と彼女に案内され、アシュリーはローウェルと朝食を取るための広間へとやってきた。

 そこにはまだローウェルはおらず、アシュリーが席に着いてそわそわとしていると、

「アシュリーちゃん、おはよー」

 と貴族とは思えない気楽さで、欠伸をしながら彼は現れた。いつも以上に軽装でシャツのボタンも留め違えている。

「あ、立たなくていいよ。辛いでしょ」

 立ち上がって挨拶をしようとすると、そう言って制止される。その言葉になるべく考えないようにしていたことを思い出して、アシュリーは固まった。
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