転生令嬢は騎士からの愛に気付かない
「かっ館長、助言ありがとうございます! まだ仕事がありますので、わたしはこれでっ」
ヴィルヘルムが足を止めて振り返ろうとしているのが目に入り、アシュリーは慌てて、頭を下げる。
そして彼と目が合う前に踵を返し、その場に背中を向けた。
ローウェルがヴィルヘルムに何やら言っている声が聞こえたけれど、アシュリーの頭はただこの場から去りたい一心で、会話の内容までは聞き取れなかった。
もう数えられないほど通った廊下を早足で歩く。
何も考えないように床を叩く自身の足音に意識を集中させるようにしたけれど、館長室から遠ざかり、受付カウンターへ続く扉が見えたところでひと息ついたら、先ほどの出来事を否応なしに思い出してしまった。
──ヴィルヘルム様に、告白、され、た……
真剣な眼差しで、緊張を孕んだような少し強張った声で、真っ直ぐに伝えられた告白を思い出して、反射的にアシュリーは両頬を押さえた。
嬉しくて心が弾むけれど、断るためにまた、ヴィルヘルムと会わなければならない。そのことがアシュリーの胸を苦しめる。
ローウェルが現れたのは偶然だったにしても、きっとヴィルヘルムはアシュリーの答えに気付いていただろう。その上で答えを保留にして、伝えたいこととは何だろう。
『また後で』
その言葉にアシュリーが頷いたら、嬉しそうに頬を緩めたヴィルヘルムの表情を思い出す。
「……ままならない、なあ……」
せっかく好きな人が自分のことを好きだと言ってくれたのに、それを断らなければいけない。
人生はそう上手くはいかないと言うけれど、転生して二度目の人生を与えてくれたのなら、好きな人と結ばれるくらいの特典を与えてくれても良かったのに。
八つ当たりだとわかってはいるが、そんなことを思わずにはいられなかった。
ヴィルヘルムが足を止めて振り返ろうとしているのが目に入り、アシュリーは慌てて、頭を下げる。
そして彼と目が合う前に踵を返し、その場に背中を向けた。
ローウェルがヴィルヘルムに何やら言っている声が聞こえたけれど、アシュリーの頭はただこの場から去りたい一心で、会話の内容までは聞き取れなかった。
もう数えられないほど通った廊下を早足で歩く。
何も考えないように床を叩く自身の足音に意識を集中させるようにしたけれど、館長室から遠ざかり、受付カウンターへ続く扉が見えたところでひと息ついたら、先ほどの出来事を否応なしに思い出してしまった。
──ヴィルヘルム様に、告白、され、た……
真剣な眼差しで、緊張を孕んだような少し強張った声で、真っ直ぐに伝えられた告白を思い出して、反射的にアシュリーは両頬を押さえた。
嬉しくて心が弾むけれど、断るためにまた、ヴィルヘルムと会わなければならない。そのことがアシュリーの胸を苦しめる。
ローウェルが現れたのは偶然だったにしても、きっとヴィルヘルムはアシュリーの答えに気付いていただろう。その上で答えを保留にして、伝えたいこととは何だろう。
『また後で』
その言葉にアシュリーが頷いたら、嬉しそうに頬を緩めたヴィルヘルムの表情を思い出す。
「……ままならない、なあ……」
せっかく好きな人が自分のことを好きだと言ってくれたのに、それを断らなければいけない。
人生はそう上手くはいかないと言うけれど、転生して二度目の人生を与えてくれたのなら、好きな人と結ばれるくらいの特典を与えてくれても良かったのに。
八つ当たりだとわかってはいるが、そんなことを思わずにはいられなかった。