転生令嬢は騎士からの愛に気付かない
「あなたを初めて見たのは、ローウェルから紹介される前の日のことだった。俺は城から兵舎へ戻る途中、図書館から一番近い庭で、あなたを見かけた。ベンチに座ってあなたは本を読んで……泣いていたんだ」
大事な思い出を辿るようにローウェルは言葉を紡ぐ。
「俺はあまり女性の泣き顔に良い印象を持ったことがなかった。この仕事をしていると色んな人間に会う所為か、どうしても疑り深くなってしまう。その中で女性の涙は、男を油断させるためのものという印象が強かった。だからあなたの涙を見たときに、こんなに美しく涙を流す人がいるのかと衝撃を受けた」
「あ、え、その……ありがとう、ございます……?」
泣き顔を見られていたということにアシュリーは顔を真っ赤にする。
そのうえ何故か褒められている。恥ずかしすぎる。羞恥心で頭の中が混乱していてどんな言葉を返せばいいのかわからず、何故か出てきたのはお礼の言葉だった。
「あなたはその後すぐに去ってしまったが、俺はその場から動けなかった。動悸はするし、顔は熱いし、何より泣き顔が目に焼き付いて離れなかった。──また会いたいと、あんなにも強く思ったことはない」
僅かに目尻を赤くして、ヴィルヘルムは頬を緩めている。
けれどその表情を注視する余裕はアシュリーにはなかった。ヴィルヘルムの口から飛び出す言葉が、予想外のことが多過ぎたからだ。
「城で見かけたのなら探し出せるだろうと、そう思っていた。──まさかその翌日にローウェルの研究室で会えるとは思わなかったが」
いっぱいいっぱいの頭で辛うじて言葉を拾い、繋ぎ合わせる。そうしてアシュリーの記憶が数年前──ヴィルヘルムと顔を合わせた日までに戻るのも、簡単なことだった。
大事な思い出を辿るようにローウェルは言葉を紡ぐ。
「俺はあまり女性の泣き顔に良い印象を持ったことがなかった。この仕事をしていると色んな人間に会う所為か、どうしても疑り深くなってしまう。その中で女性の涙は、男を油断させるためのものという印象が強かった。だからあなたの涙を見たときに、こんなに美しく涙を流す人がいるのかと衝撃を受けた」
「あ、え、その……ありがとう、ございます……?」
泣き顔を見られていたということにアシュリーは顔を真っ赤にする。
そのうえ何故か褒められている。恥ずかしすぎる。羞恥心で頭の中が混乱していてどんな言葉を返せばいいのかわからず、何故か出てきたのはお礼の言葉だった。
「あなたはその後すぐに去ってしまったが、俺はその場から動けなかった。動悸はするし、顔は熱いし、何より泣き顔が目に焼き付いて離れなかった。──また会いたいと、あんなにも強く思ったことはない」
僅かに目尻を赤くして、ヴィルヘルムは頬を緩めている。
けれどその表情を注視する余裕はアシュリーにはなかった。ヴィルヘルムの口から飛び出す言葉が、予想外のことが多過ぎたからだ。
「城で見かけたのなら探し出せるだろうと、そう思っていた。──まさかその翌日にローウェルの研究室で会えるとは思わなかったが」
いっぱいいっぱいの頭で辛うじて言葉を拾い、繋ぎ合わせる。そうしてアシュリーの記憶が数年前──ヴィルヘルムと顔を合わせた日までに戻るのも、簡単なことだった。