転生令嬢は騎士からの愛に気付かない
 はしたないことを口にしたことは、わかっている。だからいい顔をされることはないだろうなと思っていたけれど、怒るわけではなく冷ややかな態度になるわけでもなく、予想外の反応をされてアシュリーはあ然とする。それどころか、つられて頬が熱くなるほどだ。

「……アシュリー嬢、すまない。そのことも、きちんと話を、しよう」
「わ、わたしはないですっ」
「あなたがなくても、俺にはある」

 ヴィルヘルムの言葉を否定して掴まれた手を振り払おうとするが、力の差は歴然としていて振り払えない。

「誰でも良かったわけじゃない。他の女性だったら、適度に相手をしたあと、頃合いを見計らって殿下の護衛に戻っていただろう。……例え姿が違っても、あなただから触れたいと思った」

 アシュリーの心臓が、どくんと大きく跳ねる。
 それじゃあまるで、と期待が胸を過ぎる。ヴィルヘルムから視線が離せない。

「俺はあの夜だけで終わらせるつもりはない。《シェリー・ダンフォード》──いや、アシュリー・マクブライド嬢、あなたがそのつもりだったとしても」

 ヴィルヘルムの言葉にアシュリーは目を見開いた。
 濃紫色の瞳がすべてを知っていると言うように見つめてきて、アシュリーは動揺を隠せなかった。

 ──そんな、どうして、いつから……?

 疑問が浮かんでは消えることがないまま頭の中を回る。けれど混乱した頭では誤魔化すための言葉なんて出てこない。
 逃げなければという焦燥感に駆られて必死に抵抗したが、ヴィルヘルムが掴んだ手を離してくれることはなかった。

「……ど、して……」

 困惑の中、アシュリーが口にできたのは問い掛けだけだった。
 どうして、知っているの。
 誰から聞いたの。
 ──いつから、気付いていたの。
 聞きたいことは山ほど溢れてくるのに、言葉にならない。
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