転生令嬢は騎士からの愛に気付かない
 抱えていた本がなくなったことで、行きよりも身軽になった格好で、アシュリーは図書館への帰路を戻る。
 頭の中で、戻ったらやるべき仕事に優先順位を付けていく。時間に追われるほどの忙しさではないが、やることに困らないぐらいの仕事はある。

 図書館へ戻ると、いつも通りに仕事をこなした。
 返却された本を棚に戻したり、カウンターで貸し借りの手続きをしたり、本の場所を尋ねられたり……それに加えて、裏方の仕事もある。
 やっているうちに、次から次へとやる仕事を思い出して、ひとつずつ消化していくうちにあっという間に時間が経っていた。
 同僚が声を掛けてくれるまで、近々入ってくる新刊のリストの睨めっこが終わらなかった。
 開館時間内は基本的にカウンターに誰もいないということはないので、休憩を取る館員は交代制になる。
 昼食は基本的に家から持ってくるか、食堂が解放されているので、そこで取ることが多い。
 アシュリーも始めは食堂で昼食を取っていたのだが、噂話が好きな行儀見習いの令嬢や上位の貴族からの毒のある視線に耐えられなくなり、食堂で食事をすることはなくなった。
 最近はそんな不躾な視線を寄越す人間はいないと言っていいが、始めのころの嫌な記憶が思い出されるので、食堂を使うのはやむを得ない場合の時だけだ。
 幸いにも食堂へ行くと軽食ぐらいなら用意があるので、アシュリーはその軽食を購入して、別のところで食べる、ということが多かった。
 なので今日もアシュリーは食堂で、クロワッサンに野菜と茹でたチキンをスライスしたものを挟んだパンと、チョコチップの入ったマフィンを手に入れて、図書館に一番近い庭──ヴィルヘルムがアシュリーに一目惚れした場所だ──に向かう。
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