転生令嬢は騎士からの愛に気付かない
「今から来る子たちに俺のこと聞かれたら、適当に誤魔化してくれる?」
そう言われて、アシュリーは困り果てた。
先ほど聞こえてきた声のトーンから、彼が誤魔化せと言っている相手は女性──いつも彼のことを追っかけている子たちのことなのだろう。
だがジェラルドに想いを寄せる令嬢たちは派手な子たちが多く、押しが強い。嘘を突き通せる自信はなかった。
ハードルが高すぎると頬を引攣らせるアシュリーは首を横に振ろうとしたが、ジェラルドは先ほどまでの申し訳なさを潜め、どこか含みのある、それはもう爽やかな笑みを浮かべて言った。
「じゃないと口が滑って、君とヴィルヘルムの関係をうっかり人に話してしまうかもしれない。──あの舞踏会の日のことも含めて、ね?」
脅しとしか聞こえないその囁きに、アシュリーは目を見開いた。
確かに舞踏会の夜、ジェラルドはあの場にいた。けれど彼は何も知らされていなかったはずだし、関わりがただでさえ皆無だったのだから《シェリー》が《アシュリー》だとは結び付かないはずだ。
なのにジェラルドは、アシュリーとヴィルヘルムの関係を知っているような口ぶりだった。舞踏会の夜のことも知っていると言いたげで、どこまで彼が事情を知っているのかがわからず、アシュリーはぐっと言い返したい気持ちを飲み込んだ。
もしかしたら思わせぶりなことを言っているだけなのかもしれない。しかし今のジェラルドの表情からそれを見破ることはアシュリーにはできなかった。
「……わかりました」
考えた末に頷くと、ジェラルドは少しびっくりしたような顔をして、それから安堵したような笑みを浮かべた。
その裏表のなさそうな笑みにアシュリーが驚いていると、口の前で人差し指を立てた彼が廊下の方を指差した。
高い声と、ヒールが床を叩く音がする。
足音が近付いてきていることに気付いて、アシュリーは慌ててジェラルドから視線を外し、手元に持っていたクロワッサンを持ち直した。
そう言われて、アシュリーは困り果てた。
先ほど聞こえてきた声のトーンから、彼が誤魔化せと言っている相手は女性──いつも彼のことを追っかけている子たちのことなのだろう。
だがジェラルドに想いを寄せる令嬢たちは派手な子たちが多く、押しが強い。嘘を突き通せる自信はなかった。
ハードルが高すぎると頬を引攣らせるアシュリーは首を横に振ろうとしたが、ジェラルドは先ほどまでの申し訳なさを潜め、どこか含みのある、それはもう爽やかな笑みを浮かべて言った。
「じゃないと口が滑って、君とヴィルヘルムの関係をうっかり人に話してしまうかもしれない。──あの舞踏会の日のことも含めて、ね?」
脅しとしか聞こえないその囁きに、アシュリーは目を見開いた。
確かに舞踏会の夜、ジェラルドはあの場にいた。けれど彼は何も知らされていなかったはずだし、関わりがただでさえ皆無だったのだから《シェリー》が《アシュリー》だとは結び付かないはずだ。
なのにジェラルドは、アシュリーとヴィルヘルムの関係を知っているような口ぶりだった。舞踏会の夜のことも知っていると言いたげで、どこまで彼が事情を知っているのかがわからず、アシュリーはぐっと言い返したい気持ちを飲み込んだ。
もしかしたら思わせぶりなことを言っているだけなのかもしれない。しかし今のジェラルドの表情からそれを見破ることはアシュリーにはできなかった。
「……わかりました」
考えた末に頷くと、ジェラルドは少しびっくりしたような顔をして、それから安堵したような笑みを浮かべた。
その裏表のなさそうな笑みにアシュリーが驚いていると、口の前で人差し指を立てた彼が廊下の方を指差した。
高い声と、ヒールが床を叩く音がする。
足音が近付いてきていることに気付いて、アシュリーは慌ててジェラルドから視線を外し、手元に持っていたクロワッサンを持ち直した。