【執着兄弟の溺愛シリーズ】エリート救急医は契約結婚した妻を極上の執着愛で囲い込む
「ちょっと早すぎたかなぁ」
 目的のお店が近付き腕時計に視線を落とす。時刻は十一時三十分。相手を待たせるのは悪いと思い早く家を出たが、少し時間を見誤っていたようだ。
 少し遠回りをして時間を潰そうと、大通りから一本入った車の交通量の少ない道を歩く。   
すると、目の前を歩いていた若い女性がピタリと足を止めた。その体はわずかながらふらついている。
「あの、大丈夫ですか?」
どうしたのだろうかと心配になりつつ小走りで近付いて行き余計かなと思いつつも声を掛ける。
その瞬間、女性の異変に気が付いた。
「なんか気持ち悪くて……」
二十代前半と思われる若い女性の顔は真っ青で焦点が合っておらず、立っているのがやっとで今にも気を失ってしまいそうだ。
「ど、どうしよう……」
 慣れていない状況で冷静さを欠きそうになる。
この道は大通りとは違って狭いため、車も通らず人気も少ない。ここにいるのは自分だけだしなんとかしなければと自身を奮い立たせる。
「と、とりあえず座りましょう!」
 彼女の体に腕を回して支えつつ言う。
 細身の女性とはいえ突然意識を失ってしまえば、ひとりで支えるのは困難だろう。
 けれど、女性が目を瞑るのと同時に私の方へふらりと寄りかかって来た。
「わっ!」
 私は女性を抱えたままその場に尻もちを付く。
「だ、大丈夫ですか⁉」
 慌てて彼女を見る。座り込んだ彼女は意識朦朧としつつも、目立ったケガはない。そのことにホッとしていると、ザッザッとこちらへ駆けてくる足音がした。
「――大丈夫か? ケガは?」
 頭上で低い男性の声がした。
 颯爽と現れたのは、黒髪を綺麗に整えた背の高い男性だった。
 男性は躊躇なく地面に膝を突き、女性の様子を伺いつつこちらに目を向けた。
 目が合った瞬間、男性はほんの少しだけ驚いたように目を見開いた。けれど、すぐに元の表情に戻る。
「ケガではなく、この女性が突然ふらついて……。顔が真っ青で、気持ちが悪いとおっしゃっていて……」
 必死になって男性に女性の症状を伝えると、男性は小さく息を吐いた後、私を真っすぐ見つめた。
「症状は分かった。で、君の方は?」
 もしかしたら、女性を支えるために尻もちをついたところを見られていたのかもしれない。
「え、わ、私は全然大丈夫です!」
「そうか。代わる」 
私の言葉に男性は小さく頷いた後、すぐさま女性をその場で仰向けにした。
その際、彼女が手放したバッグを頭の下に入れるのも忘れなかった。
「御門総合病院の医師です。分かりますか?」
 男性がはっきりとした声で呼びかけると、女性が目を開けて頷いた。
まるでヒーローのように颯爽と現れた彼が医師であることを知り、安堵感でいっぱいになる。
「ちょっと首触るよ。今まで貧血で倒れたことは?」
 男性は流れるような動きで女性の首筋に指を当てる。
「……あります……」
「分かった。血圧が下がってるから、少し足上げるよ」
 男性は自身の黒い上着を脱ぎ、彼女の足の下に入れる。
「高さが足りないか……」
「あの、私のバッグを使ってください!」
 私は少しでも足しになればと、自身が持っていたバッグを男性に手渡した。
「すまない」
 男性が受け取り、女性の足の下に入れる。すると、すぐに女性の顔色は改善し、意識がはっきりして会話ができるまでに回復した。
 男性はもう大丈夫だと判断したのか彼女の体を支えながらその場に座らせ、手首に触れて脈を取り始めた。
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