【執着兄弟の溺愛シリーズ】エリート救急医は契約結婚した妻を極上の執着愛で囲い込む
「血圧は安定している。このまま帰っても問題ないが、一応ご家族に連絡を入れて迎えに来てもらった方がいい」
男性の言葉に従い女性がスマホで家族を呼び出す。家が近かったのか、母親がすぐに迎えに来てくれた。
娘から事情を聴き母親はぺこぺこと私達に頭を下げながらお礼を言う。すると、男性が口を開いた。
「お礼なら、彼女へお願いします。真っ先に彼女が駆けつけてくれたお陰で、娘さんはケガもせずに済みましたので」
「そうだったんですね……! 娘を助けてくださり、本当にありがとうございました」
「いえ、私は何も……」
恐縮しっぱなしの私を見て男性がほんのわずかに表情を緩めた。先程女性を救護していた時の真剣な表情とは違う柔和な男性の顔にドキッと胸が高鳴る。
女性を無事に見送り胸を撫で下ろしつつ、腕時計を見て驚く。
「た、大変……!」
紹介された男性との約束の時間まで後五分しかない。
「あのっ、今日は本当にありがとうございました。失礼します!」
男性に頭を下げて駆け出す。とはいえ、足元はパンプスのため小走りにしかならない。約束していた店の前に到着してハァハァと乱れた呼吸を整えていると、先程の男性が私の前まで歩み寄って来た。
どうやら男性もこのお店へやってきたようだ。こんな偶然もあるんだなと心の中で呟いた時、はたと我に返る。
さっきは焦っていたせいで聞き逃してしまっていたが、男性はあの時医師だと名乗った。
「もしかして……氷室さん、ですか?」
まさかと思いつつも尋ねると男性は「ええ」と冷ややかに答えた。
店に入ると、奥の予約席へ通される。茶色いレンガ調の店内は本場イタリアを彷彿とさせオシャレだった。広々とした木製のテーブルは吊り下げられた電球で温かく照らされている。
この店一番人気のパスタランチを注文した後、私はおずおずと目の前に座る氷室さんに目を向けた。
黒い同素材のジャケットとパンツの綺麗めなセットアップ姿の氷室さん。艶やかな黒髪に漆黒の瞳。高い鼻梁に薄い唇。形の良いシャープな顔は小さく、まるで俳優のように整った出で立ちをしている。
容姿端麗とは聞いていたものの、まさかここまでとは。
近くの席に座る女性も氷室さんが気になるのか、チラチラと熱い視線を送っていた。
「あの、改めまして……河合小春と申します」
「氷室武尊です」
「あの、先程は本当にありがとうございました」
「いえ」
仏頂面で淡々とした口調の氷室さんに面食らう。
あまりにも顔が整い過ぎているせいか、どことなくとっつきにくい。
院長に堅物だとは聞いて覚悟はしていたものの相当手ごわそうだ。
とはいえ、先程女性を救護した時の対応は柔らかく、やってきた家族に対しての言葉がけも丁寧で今とはまるで別人のようだった。
ランチのパスタはカルボナーラにした。向かいに座る氷室さんはクルクルと器用にスパゲティをフォークに巻きつけて優雅にたらこスパゲティを食べている。
私は何とか場を取り繕おうと氷室さんに質問する。
「あのっ、氷室さんが院長先生から救急医だとお聞きしまして……」
「ええ」
けれど、何を尋ねても氷室さんとの会話は一方通行ですぐに終わってしまう。
氷室さんは店に入ってからずっと固い表情を浮かべている。
人は第一印象が大切だと聞くし、氷室さんにとって私は好みのタイプではなかったのかもしれない。
男性の言葉に従い女性がスマホで家族を呼び出す。家が近かったのか、母親がすぐに迎えに来てくれた。
娘から事情を聴き母親はぺこぺこと私達に頭を下げながらお礼を言う。すると、男性が口を開いた。
「お礼なら、彼女へお願いします。真っ先に彼女が駆けつけてくれたお陰で、娘さんはケガもせずに済みましたので」
「そうだったんですね……! 娘を助けてくださり、本当にありがとうございました」
「いえ、私は何も……」
恐縮しっぱなしの私を見て男性がほんのわずかに表情を緩めた。先程女性を救護していた時の真剣な表情とは違う柔和な男性の顔にドキッと胸が高鳴る。
女性を無事に見送り胸を撫で下ろしつつ、腕時計を見て驚く。
「た、大変……!」
紹介された男性との約束の時間まで後五分しかない。
「あのっ、今日は本当にありがとうございました。失礼します!」
男性に頭を下げて駆け出す。とはいえ、足元はパンプスのため小走りにしかならない。約束していた店の前に到着してハァハァと乱れた呼吸を整えていると、先程の男性が私の前まで歩み寄って来た。
どうやら男性もこのお店へやってきたようだ。こんな偶然もあるんだなと心の中で呟いた時、はたと我に返る。
さっきは焦っていたせいで聞き逃してしまっていたが、男性はあの時医師だと名乗った。
「もしかして……氷室さん、ですか?」
まさかと思いつつも尋ねると男性は「ええ」と冷ややかに答えた。
店に入ると、奥の予約席へ通される。茶色いレンガ調の店内は本場イタリアを彷彿とさせオシャレだった。広々とした木製のテーブルは吊り下げられた電球で温かく照らされている。
この店一番人気のパスタランチを注文した後、私はおずおずと目の前に座る氷室さんに目を向けた。
黒い同素材のジャケットとパンツの綺麗めなセットアップ姿の氷室さん。艶やかな黒髪に漆黒の瞳。高い鼻梁に薄い唇。形の良いシャープな顔は小さく、まるで俳優のように整った出で立ちをしている。
容姿端麗とは聞いていたものの、まさかここまでとは。
近くの席に座る女性も氷室さんが気になるのか、チラチラと熱い視線を送っていた。
「あの、改めまして……河合小春と申します」
「氷室武尊です」
「あの、先程は本当にありがとうございました」
「いえ」
仏頂面で淡々とした口調の氷室さんに面食らう。
あまりにも顔が整い過ぎているせいか、どことなくとっつきにくい。
院長に堅物だとは聞いて覚悟はしていたものの相当手ごわそうだ。
とはいえ、先程女性を救護した時の対応は柔らかく、やってきた家族に対しての言葉がけも丁寧で今とはまるで別人のようだった。
ランチのパスタはカルボナーラにした。向かいに座る氷室さんはクルクルと器用にスパゲティをフォークに巻きつけて優雅にたらこスパゲティを食べている。
私は何とか場を取り繕おうと氷室さんに質問する。
「あのっ、氷室さんが院長先生から救急医だとお聞きしまして……」
「ええ」
けれど、何を尋ねても氷室さんとの会話は一方通行ですぐに終わってしまう。
氷室さんは店に入ってからずっと固い表情を浮かべている。
人は第一印象が大切だと聞くし、氷室さんにとって私は好みのタイプではなかったのかもしれない。