【執着兄弟の溺愛シリーズ】エリート救急医は契約結婚した妻を極上の執着愛で囲い込む
あの晩の後、武尊さんとどんな顔をして会えばいいのかと悩む私とは対照的に彼は何事もなかったかのように接してきた。
 あのぐらいのスキンシップは彼にとってはどうということもなく、どうやら動揺していたのは私だけのようだ。
とはいえ、あの日から武尊さんの私への態度には少しだけ変化が生まれた。
今までは仕事を終えて家に帰ってくるとすぐに書斎に引きこもっていたが、リビングでくつろぐことも増えた。
以前、食事は別々にと言われていたものの『今日、おかずを作りすぎてしまって……。よかったら一緒に食べませんか?』と断られるのを覚悟で誘うと、『いいのか?』と一緒に食卓を囲んでくれた。
結婚する前は若菜と祖母と三人でワイワイ言葉を交わしながら食事をするのが当たり前だったため、静かな空間でひとりで食べるのは少し寂しかった。
それからは夕食を共にすることも多くなった。私が作る日もあれば、武尊さんが帰りにお弁当を買ってきてくれることもある。
 そのため、夕食を食べるかどうか確認するためにメッセージのやりとりも自然と増えた。
『一緒に食べよう』と武尊さんがスイーツを買ってきてくれたこともある。夜遅く揃って甘いものを食べながら映画を観る時間は私にとって至福だった。
そんな中、お盆休みに突入した。
武尊さんからお盆の予定を聞かれて祖母の家へ遊びに行くと話すと、彼は『俺も一緒に行く』と即答した。
私と武尊さんは契約結婚だし、貴重なお休みに時間を割いてもらうのは申し訳ない。しかも、私はまだ彼のご両親に挨拶に伺ってもいないのだ。そこまで気を使わなくても大丈夫だと遠慮するも彼は絶対に行くと頑なだった。
私は最後まで渋ったが『結婚して近くに住んでいるのに顔も出さないなんてと変に思われるだろう』と言う武尊さんの言葉がダメ押しになった。
それから数日後、私は武尊さんと共に祖母と若菜の暮らすマンションを訪れた。
あらかじめ武尊さんが一緒に行くことを伝えていたため、チャイムを押すと玄関から若菜が飛び出してきた。
「し、信じられない! お姉ちゃんの旦那さん、超イケメンじゃん!」
 武尊さんを見た瞬間、若菜が口元を抑えて黄色い歓声を上げた。
 大騒ぎする若菜に動じることなく「はじめまして。氷室武尊です」と彼は淡々と挨拶をする。
「若菜、まずはご挨拶しないと」
「あ、そっか。初めまして、妹の河合若菜です」
 へへっと照れたようにはにかんだ若菜はぺこりと頭を下げて中に入るように促した。
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