【執着兄弟の溺愛シリーズ】エリート救急医は契約結婚した妻を極上の執着愛で囲い込む
 若菜と祖母が暮らすのは、2LDKのマンションの一階だ。祖母が高齢なのを知り武尊さんが配慮してくれた。
 広々としたリビングに入り、両親と祖父の仏壇に手を合わせる。
すると、祖母が急須と湯呑を木のお盆に乗せて歩み寄って来た。
料理を作っている最中だったのか、キッチンの方からはいい匂いが漂っている。
祖母と武尊さんは軽い挨拶を済ませた後、手土産を渡してリビングテーブルに着いた。
「結婚のご挨拶が遅くなって申し訳ありません」
 長方形のテーブルに私と武尊さんが並び、向かい側には祖母と若菜が座る。
 武尊さんのイケメンぶりに目を奪われてしまったのだろうか。若菜はジッと穴が開くほどに武尊さんの顔を見つめる。
「若菜、そんなに見たら武尊さんが困るよ」
「いや、大丈夫だ」
 見かねて注意すると、武尊さんがすぐさまフォローする。けれど、若菜はグッと身を乗り出して目を細めた。
「私、武尊さんのことどっかで見たことがあるような気がする」
「え?」
 若菜の言葉に、私と武尊さんは目を見合わせる。
「本当に?」
 私が聞き返すと、若菜は確信を持ったように頷く。
「うん。でも、どこで見たのか思い出せないんだよなぁ」
 すると、武尊さんが「他の誰かと見間違ったんじゃないかな」とやんわり告げる。
「それはないと思うんですよね……。だって、こんなイケメンと今まですれ違ったこともないし、見間違えるはずないんだよなぁ……」
 若菜は不思議そうに首を傾げてブツブツと呟く。そんな若菜をよそに隣に座る祖母が武尊さんに頭を下げた。
「武尊さん、小春ちゃんをお嫁さんに迎えてくれてありがとうございます。天国にいる両親もきっと喜んでくれていると思うわ。それに私達の暮らすマンションまで用意してもらって……。本当に感謝してもしきれません」
 祖母の言葉に武尊さんが背筋を伸ばす。
「いえ、こちらが勝手にしたことですので、どうぞお気遣いなく」
「本当にありがとうございます。これからも小春ちゃんをどうぞよろしくお願いします」
 祖母の言葉に武尊さんが恐縮したように頷く。
「実はね、今日武尊さんが来てくれるって聞いてささやかな料理を用意したの。お礼にはとてもならないけど、よかったら食べて行ってくれないかしら?」
『若い人は手作りの料理なんて嫌がるかしら?』と祖母は少し心配していた。
 すると、武尊さんは穏やかに「嬉しいです」と告げた。
「ありがとうございます。では、お言葉に甘えさせていただきます」
 武尊さんの言葉に祖母はホッとしたように微笑んだ。
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