【執着兄弟の溺愛シリーズ】エリート救急医は契約結婚した妻を極上の執着愛で囲い込む
 小さな小春の手を握りながら、彼女の歩幅に合わせてゆっくりと歩く。
 今日の小春は一段と綺麗だった。首元がVネックになっているふわりとしたベージュブラウンのロング丈ワンピースを着ている。緩く巻いた焦げ茶色の髪をアップにしているせいで細い首筋が露になっていて目のやり場に困る。
 少し歩くと吊り橋が見えてきた。橋の上を歩きながら眼下に視線を向ける。
「すごい……! 川面が透き通って底まで見えますね」
 小春は少し興奮したように身を乗り出して下を覗き込む。
「癒されるなぁ……」
 小春は俺が隣にいることをすっかり忘れているかのように、うっとりとした表情で呟いた。
 結婚してからも、彼女は俺と一線を引こうとしていた。でも、徐々に今のように気を許し、素の表情を見せてくれるようになった。小春の飾らない笑顔に俺の胸はじんわりと熱くなる。
 すると、その時俺たちのそばを小学生ほどの男子ふたりが駆け抜けて行った。
 途端、橋がぐらりと揺れる。
「わっ」
「危ない!」
 小春がバランスを崩しそうになり、俺は慌てて彼女の体に腕を回した。
「ご、ごめんなさい」
 ギュッと抱き締めると、俺の腕の中で小春は目を白黒させた。
 彼女の白い頬が赤く染まる。慌てる彼女が可愛くて、思わず意地悪したくなる。
「謝らなくていい。でも、ここから落ちたら大変だ。いや、大変というより命の危機だな」
 橋から川面まで十メートルといったところだろうか。マンションだと三階ほどの高さに匹敵する。
 このままずっと彼女を抱き締めていたい気持ちは山々だが、周りには人が大勢いる。彼女が恥じらって頬を赤らめている姿を他の男に見せるわけにはいかない。
 俺は渋々彼女の体を解放した。
「そ、そうですね。気を付けます」
 神妙な顔つきになった小春を見て自然と笑みが漏れる。
< 29 / 72 >

この作品をシェア

pagetop