【執着兄弟の溺愛シリーズ】エリート救急医は契約結婚した妻を極上の執着愛で囲い込む
とはいえ、パーティがどの程度の規模なのかさっぱり分からない。
社交場に行くにはTPOも配慮しなければならない。もしもおかしな服装で行けば武尊さんやご両親の顔に泥を塗ることになってしまいかねない。
確認のためにお義母さんに連絡をしてその旨を伝えた。お義母さんは『あらっ、二人で来てくれるの? 嬉しいわ』と喜んでくれた。
『じゃあ、当日馴染の行商をホテルへ呼んでおくわ。ドレスも靴もバッグもたくさん持ってきてもらうからその中から選んでねっ。ヘアメイクもお願いしなくちゃ!』と声を弾ませた。
 そして、あっという間にパーティ当日になった。
 十七時まで仕事のある武尊さんとはパーティ会場で合流することになった。
 私はパーティの開始時間よりも早くホテルの最上階のスイートルームに向かった。
お義母さんは自分がいると気を使わせるだろうからと言い残し、止める間もなく部屋から出て行ってしまった。
残された私はデパートの行商さんが運んでくれたドレスの数々に順番に袖を通していく。
 私はその中で一番気に入った淡いライトグリーンのロングドレスを選んだ。
 胸元はシースルーになっていて、デコルテが綺麗に見えるデザインだ。
さらにドレス全体にあしらわれたゴールドのスパンコールと刺繍が煌びやかさを際立たせていた。バッグと靴は行商さんと相談してまとまった印象に見えるようにベージュで統一した。
 ドレスが決まると、次にやってきたのはヘアメイク担当の女性だった。
私が施していた薄化粧を落とし、しっかり保湿した後に時間をたっぷりかけてメイクを施していく。普段は十分ほどでささっとメイクをすることが多い私は、下地を塗るまでに倍近くの時間を要したことに驚く。
メイクが終わると長い髪をアップにして編み込みシニヨンにしてもらった。顔の回りの後れ毛をゆるっと巻いてもらったお陰でパーティに相応しい華やかさが生まれた。
私は鏡の中の自分が魔法をかけられたように美しくなっていく姿を信じられない思いで見つめた。
「ど、どうでしょうか?」
 しばらくして部屋に戻って来たお義母さんにおずおずと尋ねる。お義母さんは私の姿を見るなり「素敵だわぁ!」と目を輝かせて叫んだ。
「武尊、きっと小春さんのことをさらに好きになっちゃうわねっ!」
 ニコニコ笑顔でおどけて見せるお義母さんは足首まであるロング丈の濃紺のドレスに身を包んでいた。女性としてはやや高身長のお義母さんはまるでモデルのようにスタイルがいい。
「何から何まで本当にありがとうございます」
 ドレスやバッグなど全部プレゼントするからとあらかじめ念を押されていたものの、申し訳なくなる。
「いいのよぉ。武尊と結婚してくれた小春さんには私も主人も本当に感謝してるんだから。あの子、昔から自分で決めたことは絶対に譲らない頑固なところがあるの。寡黙だし、圧倒的に言葉が足りないのよ」
『救急医になるために海外の大学に進学するから』と武尊さんが唐突に言い出したことを例にあげて、盛大な溜息を吐いた。
「しかも、ずっと前から決めてたなんて言うのよぉ。だったらさっさと言いないよって。あっ、つい愚痴っちゃったわ。ごめんなさいね」
 お義母さんがペロッと舌を出す。
「それより小春さん、結婚してから武尊のことで困っていることはない? 振り回されてない? 大丈夫?」
 お義母さんが心配そうに私の顔を覗き込む。
「確かに武尊さんはおしゃべりなタイプではありませんが、行動で私への優しさを示してくれます。この間も夜勤明けで疲れているはずなのに、体調を崩した私を心配して手厚く看病をしてくれたんです。それが本当に嬉しくて」
「小春さん……」
 うんうんと頷きながら話を聞くお義母さんの目には薄っすと涙が浮かんでいる。
「それに、自分の信念をしっかりと持って救急医として働く武尊さんを私は心から尊敬しています。ただひとつ、困っていることといえば、武尊さんが働き詰めなことでしょうか? 医師として忙しいのは仕方ないとは思うのですが、もう少しだけゆっくり休んで欲しいなって思います」
 私の言葉にお義母さんは「武尊の体の心配まで……小春さん、ありがとう。これからも武尊をよろしくお願いします」と潤んだ目でにっこりと笑った。
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