【執着兄弟の溺愛シリーズ】エリート救急医は契約結婚した妻を極上の執着愛で囲い込む
武尊さんとの待ち合わせ時間が迫り、私はお義母さんと別れてパーティ会場の外で武尊さんの到着を待った。
高級ホテルの一階を貸し切って行われるパーティーは私が想像しているよりもずっと盛大だった。
美しく着飾った大勢のゲスト達が足取り軽くパーティ会場へ吸い込まれていく。
武尊さんの姿を見落とさないように目を凝らしていた時だった。
「あ……」
ネイビーのスーツを着た背の高い男性が駆け足でこちらへ歩み寄って来た。私は息を飲み、まるで強力な磁石に吸い寄せられるようにその男性……武尊さんに目を奪われる。
体のラインに沿ったスーツを完璧に着こなして颯爽と歩く武尊さんは、まるでスポットライトを当てられているかのように光り輝いている。
気軽に話しかけることが憚られるほどの絶対的なオーラをまとっている彼がふいにこちらを見た。
黒曜石のような瞳が私の姿を捕らえた。
私と目が合った瞬間、固く結ばれていた彼の唇がまるで何かに驚くかのようにほんのわずかに開かれた。
「待たせてすまない」
私の前まで歩み寄ると、武尊さんが遅れたことを謝罪した。
「いえ、私も今来たところなので。武尊さん、お仕事お疲れ様でした」
「……ああ」
笑顔で労うも武尊さんは何故か複雑そうな表情を浮かべ、私から目を逸らす。
そこでハッとする。もしかして、私の格好がお気に召さなかったのかもしれない。
「あのっ、変でしたか……?」
おずおずと尋ねる。
今まで着たことのない高価なドレスに煌びやかなヘアメイク。私には似合わないと思われたんだろうか。
「いや、そんなことはない」
言葉では否定しつつも、武尊さんは何故か仏頂面で頑なに私と目を合わせようとはしなかった。
パーティー会場に入ると、テーブルの上にはお義母さんの言葉通りずらりと美味しそうな料理の数々が並んでいた。立食パーティのようで、ゲスト達はあちこちで談笑を交えつつ、各々お酒や食事を楽しんでいる。
「兄さん」
私と武尊さんが揃ってシャンパンを嗜んでいると、唐突に男性の声がした。
振り返るとそこにいたのは、目を見張るほどに甘いマスクの男性だった。
背丈は武尊さんと変わらないだろうか。遊び心のあるグレーのチェックのスーツが良く似合っている。
ゆるっとしたミディアムウルフの艶やかな黒髪。センターパートの前髪から覗く涼し気な瞳。鼻梁は高く唇は薄い。
「翔真か。久しぶりだな」
翔真と呼ばれた男性は武尊さんの隣にいる私に目を向けた。
「はじめまして、氷室翔真です」
「は、はじめまして。河合小春と申します」
目の前にいる男性が武尊さんの弟だと気付いて慌てて挨拶をする。
結婚にあたって武尊さんから家族構成などは知らされていたものの、翔真さんと直接会ったのは今日が初めてだった。
弟の翔真さんは武尊さんのひとつ年下でアストラルジェット航空に勤めるパイロットだという。あまり詳しくはないけれど、三十代という若さで機長を務めているなんて、職種は違えど兄の武尊さん同様に相当優秀な人なんだろう。
「兄さんの奥さんがこんなに素敵な人だなんて驚いたなぁ」
翔真さんは目を細めて愛嬌のある笑みを浮かべる。笑うとまるで子犬のようにあどけない表情になる。その笑顔がどことなく武尊さんに重なってドキッとした。
「いえ、そんな……」
お世辞とは分かっていながらも褒められることに慣れていない私はどういう反応をしたらいいのか分からずに戸惑ってしまう。
「そのドレスとヘアメイクも小春さんによく似合ってるよ。すごく綺麗だ」
「ありがとうございます。そう言ってもらえて嬉しいです」
思わず笑顔が零れた。
この時のために、色々な人が私に手を貸してくれたのだ。お義母さんや行商さん、ヘアメイクさんの顔が頭に浮かぶ。
「おい、翔真。もういいだろう」
すると、何かが気に食わなかったのか武尊さんはへの字口になる。翔真さんはまじまじと武尊さんの顔を見つめた。
すると、翔真さんは口元を何かに耐えるようにモゴモゴさせた後、「ぶはっ!」とたまらず吹き出した。
高級ホテルの一階を貸し切って行われるパーティーは私が想像しているよりもずっと盛大だった。
美しく着飾った大勢のゲスト達が足取り軽くパーティ会場へ吸い込まれていく。
武尊さんの姿を見落とさないように目を凝らしていた時だった。
「あ……」
ネイビーのスーツを着た背の高い男性が駆け足でこちらへ歩み寄って来た。私は息を飲み、まるで強力な磁石に吸い寄せられるようにその男性……武尊さんに目を奪われる。
体のラインに沿ったスーツを完璧に着こなして颯爽と歩く武尊さんは、まるでスポットライトを当てられているかのように光り輝いている。
気軽に話しかけることが憚られるほどの絶対的なオーラをまとっている彼がふいにこちらを見た。
黒曜石のような瞳が私の姿を捕らえた。
私と目が合った瞬間、固く結ばれていた彼の唇がまるで何かに驚くかのようにほんのわずかに開かれた。
「待たせてすまない」
私の前まで歩み寄ると、武尊さんが遅れたことを謝罪した。
「いえ、私も今来たところなので。武尊さん、お仕事お疲れ様でした」
「……ああ」
笑顔で労うも武尊さんは何故か複雑そうな表情を浮かべ、私から目を逸らす。
そこでハッとする。もしかして、私の格好がお気に召さなかったのかもしれない。
「あのっ、変でしたか……?」
おずおずと尋ねる。
今まで着たことのない高価なドレスに煌びやかなヘアメイク。私には似合わないと思われたんだろうか。
「いや、そんなことはない」
言葉では否定しつつも、武尊さんは何故か仏頂面で頑なに私と目を合わせようとはしなかった。
パーティー会場に入ると、テーブルの上にはお義母さんの言葉通りずらりと美味しそうな料理の数々が並んでいた。立食パーティのようで、ゲスト達はあちこちで談笑を交えつつ、各々お酒や食事を楽しんでいる。
「兄さん」
私と武尊さんが揃ってシャンパンを嗜んでいると、唐突に男性の声がした。
振り返るとそこにいたのは、目を見張るほどに甘いマスクの男性だった。
背丈は武尊さんと変わらないだろうか。遊び心のあるグレーのチェックのスーツが良く似合っている。
ゆるっとしたミディアムウルフの艶やかな黒髪。センターパートの前髪から覗く涼し気な瞳。鼻梁は高く唇は薄い。
「翔真か。久しぶりだな」
翔真と呼ばれた男性は武尊さんの隣にいる私に目を向けた。
「はじめまして、氷室翔真です」
「は、はじめまして。河合小春と申します」
目の前にいる男性が武尊さんの弟だと気付いて慌てて挨拶をする。
結婚にあたって武尊さんから家族構成などは知らされていたものの、翔真さんと直接会ったのは今日が初めてだった。
弟の翔真さんは武尊さんのひとつ年下でアストラルジェット航空に勤めるパイロットだという。あまり詳しくはないけれど、三十代という若さで機長を務めているなんて、職種は違えど兄の武尊さん同様に相当優秀な人なんだろう。
「兄さんの奥さんがこんなに素敵な人だなんて驚いたなぁ」
翔真さんは目を細めて愛嬌のある笑みを浮かべる。笑うとまるで子犬のようにあどけない表情になる。その笑顔がどことなく武尊さんに重なってドキッとした。
「いえ、そんな……」
お世辞とは分かっていながらも褒められることに慣れていない私はどういう反応をしたらいいのか分からずに戸惑ってしまう。
「そのドレスとヘアメイクも小春さんによく似合ってるよ。すごく綺麗だ」
「ありがとうございます。そう言ってもらえて嬉しいです」
思わず笑顔が零れた。
この時のために、色々な人が私に手を貸してくれたのだ。お義母さんや行商さん、ヘアメイクさんの顔が頭に浮かぶ。
「おい、翔真。もういいだろう」
すると、何かが気に食わなかったのか武尊さんはへの字口になる。翔真さんはまじまじと武尊さんの顔を見つめた。
すると、翔真さんは口元を何かに耐えるようにモゴモゴさせた後、「ぶはっ!」とたまらず吹き出した。