【執着兄弟の溺愛シリーズ】エリート救急医は契約結婚した妻を極上の執着愛で囲い込む
第三章 募る想い~氷室武尊side~
救急医療は、一次から三次までの三つに分かれている。
一次救急は入院の必要がない『軽症患者』、二次は一般病棟に入院する必要のある『中等症患者』、そして俺の勤める御門総合病院は集中治療を要する三次救急の『重症患者』の受け入れを主に行っている。
 夜中の二時、救急外来の外線が鳴った。
救急搬送の受け入れの可否を確認するための電話だ。瞬間、部屋に緊張が走る。
「はい。御門総合病院、氷室です」
 手を伸ばして電話機を取りホワイトボートの前に移動しつつ、伝えられる情報に耳を傾ける。
「五十代、男性。自宅で就寝中に急な胸の痛みと圧迫感があると訴えあり。救急隊到着時、意識混濁。既往歴なし。受け入れ可能でしょうか?」
 電話越しの救急隊員は淡々と伝えるが、その情報からは一分一秒を争う事態であることが伺える。
 胸の痛みと圧迫感が主訴であることから、急性心筋梗塞や大動脈解離などの命に関わる病気である可能性がある。
ホワイトボードに書き入れた後、処置室の空きを確認後「受け入れます」と伝えて電話を切る。
「急ぎで心臓外科の萩野先生と麻酔科の丸岡先生にオンコールを頼む。それと造影CTの準備とオペ室の空き確認しておいて」
「分かりました!」
 看護師に指示を出しつつ、ラテックス手袋をはめる。
「床頭エコーの準備も頼む」
 様々な可能性を考えつつ、患者の受け入れを進める。 
しばらくすると、救急車のサイレン音が近付いてきた。ほどなくストレッチャーに乗せられた患者が運び込まれてきた。
救急外来が一気に慌ただしくなる。
「こんばんは、分かりますか?」
 男性患者に声を掛けると目のあたりがわずかに動いたが、反応は薄い。
「痛みが始まった正確な時間は?」
「奥様の話によると、午前一時半頃とのことです」
 救急隊員から聞き取りをし、男性の胸に聴診器を当てると心雑音があった。
バイタルにも乱れがある。
男性の顔色は悪く、意識レベルがさらに低下している。
「心エコー撮るぞ」
すぐさま患者の胸にジェルを塗り、エコーを手にモニターを凝視する。
すると、そこへ先程呼んだ心臓外科医の萩野先生が駆けつけた。
五十代のベテランで、数々の難しい手術を成功させてきた確かな腕前の医師だ。
青いスクラブの上に白衣を羽織った萩野先生は、モニターを覗き込む。
「どう?」
声を掛けられたタイミングで、上行大動脈に気になる部分を見つけた。
「この部分、怪しいですね」
「どこ?」
 萩野先生が目を細める。
「ここです」
「あぁ、確かに解離してそうだ」
 再度場所を伝えると、萩野先生は眉間に皺を寄せて唸った。
「ほぼ大動脈解離で間違いなさそうですね」
「だな。にしてもよくエコーでこんな小さな解離を見つけたな。さすがだよ、氷室」
萩野先生は俺の背中を叩く。
 事態は一刻の猶予もない。上行大動脈に解離がある場合、緊急手術の必要がある。
「急ぎで造影CTの準備頼む!」
 俺の言葉でERのスタッフの雰囲気が一層張り詰めた。
 その後、患者は無事に萩野先生へ引き継がれ、救急医としての役目は終わった。
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