【執着兄弟の溺愛シリーズ】エリート救急医は契約結婚した妻を極上の執着愛で囲い込む
この日も続々と運び込まれてくる患者を迎え入れ続け、ようやく朝を迎えた。
 救急外来のそばに設置されている医局のソファでコーヒーを飲んで体を休めていると、「お疲れ」と声を掛けられた。
「いやー、今日も大忙しだったな」
「お互いにな」
 眼鏡をかけインテリ然とした風貌の藍沢は同期の救急医だ。高身長でスラリと背が高い。
染めているわけではないらしいが、生まれつきだと言う焦げ茶の髪はサラサラで『王子様』だと看護師たちからの人気は高い。
 藍沢はテーブルを挟んだ向かい側の椅子に座り、コンビニ袋から取り出したエクレアを美味しそうに頬張る。
「朝方でクタクタに疲れている時、よくそんな甘い物を食べようと思えるな」
「糖分を取ると効率的に脳を動かせるからさ。それに、セロトニンとドーパミンが分泌されて幸福度が爆上がりだよ。氷室もどうだ?」
「いや、俺はいい」
 袋の中からシュークリームを取り出そうとした藍沢を制止する。
「そういえば、新婚生活はどう? 奥さんとは上手くやってる?」
 あっという間にエクレアを食べ終えた藍沢がふたつめのシュークリームの袋を開けつつ尋ねる。
「俺はうまくやっているつもりでいる」
 藍沢の言葉に首を擦る。
 照れくさくなるとつい首を擦ってしまうのは昔からの癖だ。
「ふっ、照れるなって。それにしても氷室が結婚なんてな。救急医の中では一番遅いと思ってたのに、先を越されるとはねぇ」
「藍沢は結婚しようと思えばすぐにできるだろう?」
「それがなかなか、ね」
 藍沢は首を竦めておどけて見せる。
 この病院で救急医として働き始めてからの付き合いである藍沢。性格は違うものの意外に馬が合い、こうやって無駄口を叩ける気の知れた存在だ。
「で、もう奥さんにはあのこと打ち明けたのか?」
「それは……」
 言葉を濁す俺に藍沢はやれやれと息を吐いた。
「奥さん、あの時にお前が助けた女性なんだろう?」
 俺はほんのわずかに視線を下げ「ああ」と小さく頷いた。
ふたりの本当の出会いは、今から約一年前に遡る。
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