【執着兄弟の溺愛シリーズ】エリート救急医は契約結婚した妻を極上の執着愛で囲い込む
御門総合病院で救急医として働いていた俺は、病院近くの公園で偶然小春と出会った。
 救急医という仕事柄、夜勤もあり不摂生な生活になりがちだ。
 そのため、健康のために運動でもしようと、休日は家の近くの運動公園内をランニングするのが日課になっていた。
 その公園にはランニングコースがあり、休日の朝には近所のジョガーはもちろん、近隣の陸上部の学生なども訪れて汗を流している。
 一通りのランニングを終えた後、俺は公園の東側にあるベンチへ足を向けた。
 そのベンチではいつも黒白の人懐こい野良猫が日向ぼっこをしているのだ。
 興味本位で隣へ座ると、猫は顔を持ち上げて大きなあくびをすると、ノソノソと俺の膝の上に乗り丸くなって眠った。
 猫と触れ合うのは初めてで、その日から俺は『大福』と勝手に名付けて可愛がっていた。
 その日も例にもれず大福はいた。
 けれど、ベンチには珍しく先客がいる。二十代半ばだろうか。焦げ茶色の髪をひとつに束ねた色白の女性。
 女性は穏やかな笑みを浮かべながら大福に一生懸命話し掛けている。
 大福はといえば、女性の膝の上で顎の下を撫でられてうっとりとご満悦な表情だ。
 残念だが今日はこのまま帰ろう。
 回れ右しようとした時、大福と目が合った。大福は律儀に『にゃっ』と俺に挨拶をすると、女性の膝の上から勢いよく飛び降りた。
『あっ!』
 その拍子に女性のバッグが足元に落ちて、中身が散乱した。
 女性は弾かれたように立ち上がり、慌てて中身を拾い集める。
 大福は我関せずで俺の足元にスリスリとすり寄ってくる。
 さすがにこのまま見て見ぬふりをするわけにはいかないと、俺は仕方なく女性の方へ歩みより、荷物を拾うのを手伝うことにした。
『す、すみません!』
『いえ』
 元はといえば俺が現れたそうでこんなことになったのだ。大福は素知らぬ顔で地面に寝転んでいる。
 まったく、人の気も知らずのんきな奴だ。
 女性の荷物の中にはノートや家計簿などがあった。さらに奨学金のパンフレットも見え、ピタリと手を止める。
『実は、高校生の妹が海外の大学を目指しているんです』
 女性は奨学金のパンフレットを拾い上げると、汚れを手で払いながら言った。
『どうしてそのパンフレットを姉の君が?』
 普段ならこんな風に見ず知らずの女性にプライベートなことをいちいち尋ねたりしない。
 ただ、荷物をぶちまけるキッカケを作ってしまったのは俺だし、罪滅ぼしに少し話を聞くことにした。
 俺たちはベンチに揃って腰掛けた。それにめざとく気付いた大福は俺の膝の上にピョンッと飛び乗ってくる。 
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