【執着兄弟の溺愛シリーズ】エリート救急医は契約結婚した妻を極上の執着愛で囲い込む
「何かあったのか?」
 武尊さんが訝し気な顔で私を見つめる。私は彼に心配をかけないように「大丈夫です」と微笑んだ。
「そういえば、今日ネックレスは?」
 すると、武尊さんが尋ねた。武尊さんは私の変化に敏感だ。毎日付けていたネックレスを付けていないことにすぐに気付いたようだ。
 武尊さんに素直に打ち明けたほうがいいだろうか。
けれど、武尊さんにもらった大切な物だ。失くしたなんてどうしても言えない。 
「仕事で外して……それで……」
「そうか」
 誰かに嘘を吐くのは苦手だ。しどろもどろになりながら言うと武尊さんはそれ以上追及してこようとはしなかった。
 そのことにホッと胸を撫で下ろしつつ、彼からもらった大切なネックレスを失くしてしまったことに心を痛める。
 食事を終えると、私はいてもたってもいられず武尊さんに『少し出掛けてきますね』と告げ、行き先も告げずに家を飛び出した。
 彼に呼び止められてしまえば、上手く言い訳する自信がなかった。
 診療所まで駆けて行き、掃き掃除をしていた辺りに懐中電灯を向けて重点的に探す。
「お願い……見つかって……」
 少しすると、雨が降り出した。私はなりふり構わず地面に這いつくばって必死に目を凝らす。
 すると、ポケットに入れていたスマホが震えているのに気が付いた。取り出すと、知らない番号からの着信だった。
「……もしもし」
 通話ボタンをタップして耳に当てる。
『ああ、出た。僕だよ、小春ちゃん。分かる?』
「……もしかして山田さんですか?」
『声だけで気付いてもらえて嬉しいなぁ』
 電話の相手は山田さんだった。
「あの山田さん、どうして私の番号を?」
『保証人の欄に小春ちゃんの電話番号が書いてあったでしょ? まだ手元に残してあるんだ』
 アパートはすでに解約済みだ。本来ならば個人情報は適切な方法で破棄するはずなのに、どことなく得意げに言い放つ山田さんに違和感を覚える。
「すみません。私、今忙しくて……。急ぎの用件でないならお話は後でいいですか?」
 今はネックレスを探し出すほうが先決だ。電話を切ろうとそう告げる。
『もしかして何か探してる? 例えば、ネックレスとか?』
「え……?」
 山田さんの言葉にぞわっと鳥肌が立った。
 言葉を失っている私に、山田さんが電話越しに笑う。
『大切なネックレスを落としたらダメだよ。普段はしっかり者だけど、小春ちゃんって時々抜けてるんだよね。そういうところも可愛いけど』
「どういう意味ですか……?」
『これ、ダイヤモンドだよね? 売ったらいくらになるのかなぁ』
 まるで手元に私の探すネックレスがあるかのように話す山田さん。
 今朝、山田さんと私は言葉を交わした。もしかしたらその時に落としたのかもしれない。それを山田さんが拾ったとしか考えられない。
「ネックレス……山田さんが持っているんですね?」
『ああ、持ってるよ』
 楽しそうに答える山田さんに憤る。
「どうして……?」
 必死に訴えると、山田さんは語気を強めた。
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