【執着兄弟の溺愛シリーズ】エリート救急医は契約結婚した妻を極上の執着愛で囲い込む
朝食を食べている時、大福の話になった。
 記憶を取り戻した小春は大福に会いたがっていた。
けれど、小春の事故の後に何度も公園へ足を運んで大福を探したが、大福の姿は見つからず会えていない。
もう小春に何一つ隠し事はしたくない。
正直に話すと小春は目を潤ませながらも、それでも大福に会いに行きたいと訴えた。
俺は承諾し、散歩がてらふたりで公園へ向かった。
 マラソンコースの奥にあるベンチへ向かうと、そこにはやはり大福の姿はなかった。
「やっぱりいませんね……。大福ちゃんにもしかして何かあったんじゃ……」
 大福は人懐っこいものの、公園に居つく野良猫だった。どこかで事故に遭ったり病気になってしまった可能性もある。 
「大福ちゃーん!」
 小春が大声で大福の名前を呼ぶ。その時、通りかかった中年の女性がピタリと足を止めて声を掛けてきた。
「あのっ、もしかしてここにいた野良猫ちゃんのことを探してるのかしら?」
「は、はい! 大福ちゃんのことご存じなんですか?」
 小春が尋ねると、女性は「ちょっと待ってね」と取り出したスマホ画面を俺たちに差し出した。
「大福だ」
 俺は思わず声に出していた。隣にいる小春も確信を持ったように頷く。
どこかの家の中だろうか。写真の中で大福らしき猫が窓際で腹を出して日向ぼっこをしている。
「実はこの場所で里親会に保護された後、私が引き取って一緒に暮らし始めたのよ」
 外猫には交通事故や感染症だけでなく、心無い人間からの虐待のリスクがある。
 その一方、家猫になれば常に温かい寝床と食事が与えられ、安全は守られる。
 一度は俺も大福を引き取ろうかと考えた。けれど、救急医という仕事柄家にいられる時間も少なく大福に寂しい思いをさせることになると決断できずにいた。
「今はうちで穏やかに暮らしているから心配しないでね。それとね、私もあの子を大福って名付けたの。奇遇ね」
 まさかの出来事に、俺と小春は目を見合わせた。
 写真からは大福が女性の家で幸せに暮らしているのが伝わってきた。
 会えなくなるのは残念だが、大福にとっては家猫として可愛がってもらった方が幸せだろう。
「大福をよろしくお願いします」
「ええ、任せて。必ず幸せにするわ」
 それから女性は俺達に大福の写真を見せてくれた。大福が女性やその家族から愛されているのが伝わり、俺と小春はホッと胸を撫で下ろしたのだった。
 
それから一か月ほどが経ち、小春を苦しめた山田は窃盗罪などの容疑で起訴され、小春への接見禁止令が出された。
 弁護士によると、のちに山田には小春以外の女性に対しても数々の余罪が判明し、懲役刑は免れないだろうという話だった。山田の一件が解決し、ようやく平和な日々が訪れた。
 この日、食事を終えた後、俺たちはソファに座りまったりとテレビを観て過ごしていた。
 風呂上がりでわずかに頬を上気させた小春の顔をじっと見つめる。
 可愛すぎる、と心の中で呟く。
 小春には男を惹きつける魅力がありすぎる。本人は無自覚なようだから困ったものだ。
これから先も山田のように彼女の純粋さに付け込んで近付いて来ようとする男が現れるだろう。
その時は、俺がどんな手を使ってでも排除してみせる。
小春の視界に映る男は、後にも先にも俺だけでいい。
「小春」
 腕を伸ばして艶やかな茶色い髪を撫で付けと、小春がこちらに目を向けた。
「愛してる」
 呟きながら彼女の唇にキスを落とす。
小春は恥ずかしそうにしながらも「私も愛してます」と微笑んだ。
彼女のこんな可愛い顔を見られるのは俺だけだという優越感に浸りながら、彼女の細い腰を引き寄せた。
 そして、この日も俺は彼女への深い愛を刻み付けたのだった。
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