【執着兄弟の溺愛シリーズ】エリート救急医は契約結婚した妻を極上の執着愛で囲い込む
第六章 愛する家族
ステンドグラスに差し込んだ太陽の暖かな光が、大理石の床に散らばっている。
 パイプオルガンの重厚な音が響く教会で私は真っ赤な絨毯を武尊さんと歩いていた。
 純白のドレスを纏い一歩一歩と祭壇に向かってゆっくりと歩みを進めていると、武尊さんと出会ってから今までの日々が脳裏を過った。
 気持ちが通じ合った後、武尊さんは今まで抑えていた反動かの如く、言葉と態度で愛を伝えてくれるようになった。
 彼はいつだって私の気持ちを一番に考えて尊重してくれる。今日の結婚式だってそうだ。
 派手なことや人から注目を浴びることが苦手な武尊さんは気が乗らないにも関わらず、『結婚式をしよう』と申し出てくれた。
 今は結婚式をしない夫婦も多いと聞くし、無理をしていないか心配だった。
 けれど、武尊さんは『小春にウエディングドレスを着させてあげたいし、妹の若菜ちゃんとおばあさんにも花嫁姿を見せてあげたい』と頑張ってくれたのだ。
 式場を選ぶ際にも、高齢な祖母のことを考えて都内の式場を選ぼうと提案してくれた。 
 祭壇に向かう途中、多くの参列者が私達に盛大な拍手を送ってくれた。
 武尊さんのご両親や親戚、それに病院で一緒に働く救急医仲間も大勢集まった。
 参列者の中には矢崎ファミリークリニックで一緒に事務員として働く鈴木さんと古関さん、それに看護師や矢崎先生の姿もある。
 小さく頭を下げて微笑むと、みんなが笑顔を返してくれた。
杖を突いた祖母は感極まったように白いハンカチで目頭を押さえている。その隣にいた若菜は鼻を真っ赤にしてボロボロと涙を流していた。
『おめでとう』と若菜が声に出さずに言ったのを私は見逃さなかった。
大切な人たちに温かい祝福を受け、胸が感動で打ち震える。
 それから、式は順調に進み、誓いの言葉と指輪交換を終えてついに誓いのキスの時間がやってきた。
 互いに向かい合い、武尊さんが私の顔にかかるベールを持ち上げた。
 式が始まってから武尊さんは緊張からかずっとしかめっ面をしている。
 黒いタキシードに身を包んだ武尊さんの凛々しい姿に私は胸をときめかせる。
 結婚してからも私は武尊さんにドキドキさせられっぱなしだ。
「それでは、誓いのキスを」
 牧師に促され、武尊さんはごくりと唾を飲み込んだ後、そっと私の唇にキスをした。
 ふたりきりの時は私を翻弄して腰が砕けてしまいそうなほど甘いキスをする武尊さんなのに、今日はやけにあっさりとしている。
 武尊さんの緊張気味の顔が可愛くて可笑しくなってきた。
笑いを堪える私に武尊さんが気付く。
見つめ合った瞬間、私達の顔には同時に笑顔が零れた。
そんな私達を参列者が大きな拍手で祝福してくれたのだった。
< 68 / 72 >

この作品をシェア

pagetop