【執着兄弟の溺愛シリーズ】エリート救急医は契約結婚した妻を極上の執着愛で囲い込む
「そうですね……大体二、三十分ほどお待ちいただくことになるかと思います」
およそ十五分ほどで案内できるだろうと予測が付いたが、伝えていた時間より一分でも遅くなればクレームの原因になるため少しだけ余裕を持って時間を伝えた。
「はぁ? これだけしか待ってないのに、どうしてそんなに時間がかかるんだ!」
「申し訳ありません。順番にお呼びしますので、少々お待ちください」
 私は丁重に頭を下げて待つように頼むが、男性は納得がいかないのか重苦しいため息を吐いた。
 結局、男性は十分ほどで呼ばれた。診察室へ向かう男性にホッと胸を撫で下ろしたが、問題は会計時に起こった。
「久我山様、大変お待たせいたしました」
 会計担当の古関さんが男性を呼び会計を行う。すると、突然男性が怒声を上げた。
「ふざけるな! ただ話をしただけなのにどうしてそんなに高いんだ!」
 男性は食あたりだったようで、軽度だったため投薬のみの処方となっているが支払金額に納得がいかないようだ。
「ぼったくるのもいい加減にしろ!」
「で、ですが点数は法律で決まっていまして……。なので、ぼったくっているわけでは……」
「だったらなんだ! 言い訳するな!」
 去年から働き始めた古関さんはまだ経験が浅い。確かに国が定める医療行為ごとに点数が決められているが、こういう場合は理詰めで返すと逆効果になる。
 男性に怒鳴りつけられた古関さんが顔を強張らせる。
私はすぐさま古関さんと男性の間に割って入った。
「大変申し訳ありません。ご負担が大きく感じられますよね」
 私は不満そうな男性に寄り添うように声をかけた。待合室にはすでにほかの患者さんの姿はなく、男性が最後だ。
 だったら、納得いくまで説明した方がいい。
「少しお時間をいただくことになってしまいますが、今日の診察の詳細を説明させていただけませんか? 何か不明点がありましたらその都度聞いていただければと思います」
「そうしろ」
 命令口調の男性に私は処置名や薬剤名などが細かく記載された診療明細書を提示して男性にひとつずつ説明していった。
三分の一ほど事細かに説明をすると、男性は話を聞くのが嫌になったのか溜息を吐いた後、「分かった。もういい!」と医療費を支払って出て行った。
ホッと胸を撫で下ろす。すると、傍で固唾を飲んで見守っていた古関さんが「河合さん、本当にありがとうございます~!」とお礼を言った。
「私、焦っちゃって……。すみません……」
 申し訳なさそうな古関さんを励ますように微笑む。
「大丈夫だよ。私も前はああいう場面で焦っちゃうタイプだったの。その度に鈴木さんに助けてもらって」
「そうだったんですね」
「うん。今日は患者さんも多くて大変だったね。お腹空いたし、急いで片付けてお昼食べよう」
「はいっ!」
 私の言葉に古関さんが笑顔で頷いた。

 お昼休憩を挟み午後の診察が始まった。来院する患者さんは途切れることはない。
「こんにちは」
 そんな中、午後の受付時間終了間際に見慣れた顔の男性がやってきた。焦げ茶色の髪にゆるっとしたパーマをかけに丸眼鏡をかけた男性。パッチリとした二重の目が優しく穏やかな印象を受ける。
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