【執着兄弟の溺愛シリーズ】エリート救急医は契約結婚した妻を極上の執着愛で囲い込む
「山田さん、こんにちは。今日はどうされました?」
彼は私達三人が暮らすアパートのオーナーだ。
「実は昨日から少し体調が悪くて。一応診てもらおうかなって」
診察券を渡しながら、山田さんは穏やかに微笑む。
三十代後半の山田さんは、私達が暮らすアパート以外にもいくつかの物件を貸し出しているやり手オーナーだ。
祖母のアパートに引っ越してから山田さんに挨拶に行くと、彼は親身になって話を聞いてくれた。そして、私達の境遇に胸を痛め、それからは何かと私達を気にかけてくれた。
厚意で家賃を下げようかと提案してくれたり、仕事と家事で忙しくする私を慮ってどこかへ一緒に出掛けてリフレッシュしようと誘ってくれたりもする気遣いのできる良い人だ。
「そうなんですね……」
大丈夫だろうかと心配してると山田さんがふっと目を細めた。
「多分、ちょっとした疲れだと思うから安心して。小春ちゃん、今日はもうすぐ仕事終わりでしょ? 僕、車できたから家まで送って行こうか?」
「お気遣いありがとうございます。でも、今日はレセプト業務があるので、少し残業していく予定なんです」
レセプト業務とは、組合健保や市区町村などの健康保険の保険者に診療請求をする業務のことを指す。
前月一か月分の診療データを翌月の十日までに審査支払機関へ提出しなければならない。
ミスは決して許されず、もしも不備が見つかれば返戻を受けることになり差し戻されてしまうとやり直しになる。
そうなれば再提出に手間がかかるだけでなく、診療所に入る収入も少なくなってしまうため慎重な作業が求められる。
「遅くなるならなおさらだ。終わってから迎えに来るよ。前みたいなことがあったら困るでしょ」
「お気持ちはありがたいのですが、大丈夫です」
私がそう答えたタイミングで、続けて患者さんがやってきた。
「そちらの椅子にかけて少々お待ちください」
「……そっか。分かった」
山田さんは渋々頷き、受付から一番近い場所にある椅子に腰かけた。
彼がこれほどまでに私を心配するのは、半年ほど前に私が交通事故にあったからだろう。歩道を歩いていた時、突っ込んできた車に撥ねらたのだ。
大きな怪我はなかったものの、事故のショックからか事故前後の記憶が曖昧になってしまっていた。三日ほど入院している間も山田さんは私を毎日見舞いに訪れ『困ったことがあればいつでも僕に言ってね』と温かい言葉をかけてくれた。
それからは『たまたま近くを通りかかったから』と病院からアパートまでの送迎を申し出てくれることもあった。
けれど、彼の厚意に甘えるわけにはいかないといつも丁重にお断りしていた。
彼は私達三人が暮らすアパートのオーナーだ。
「実は昨日から少し体調が悪くて。一応診てもらおうかなって」
診察券を渡しながら、山田さんは穏やかに微笑む。
三十代後半の山田さんは、私達が暮らすアパート以外にもいくつかの物件を貸し出しているやり手オーナーだ。
祖母のアパートに引っ越してから山田さんに挨拶に行くと、彼は親身になって話を聞いてくれた。そして、私達の境遇に胸を痛め、それからは何かと私達を気にかけてくれた。
厚意で家賃を下げようかと提案してくれたり、仕事と家事で忙しくする私を慮ってどこかへ一緒に出掛けてリフレッシュしようと誘ってくれたりもする気遣いのできる良い人だ。
「そうなんですね……」
大丈夫だろうかと心配してると山田さんがふっと目を細めた。
「多分、ちょっとした疲れだと思うから安心して。小春ちゃん、今日はもうすぐ仕事終わりでしょ? 僕、車できたから家まで送って行こうか?」
「お気遣いありがとうございます。でも、今日はレセプト業務があるので、少し残業していく予定なんです」
レセプト業務とは、組合健保や市区町村などの健康保険の保険者に診療請求をする業務のことを指す。
前月一か月分の診療データを翌月の十日までに審査支払機関へ提出しなければならない。
ミスは決して許されず、もしも不備が見つかれば返戻を受けることになり差し戻されてしまうとやり直しになる。
そうなれば再提出に手間がかかるだけでなく、診療所に入る収入も少なくなってしまうため慎重な作業が求められる。
「遅くなるならなおさらだ。終わってから迎えに来るよ。前みたいなことがあったら困るでしょ」
「お気持ちはありがたいのですが、大丈夫です」
私がそう答えたタイミングで、続けて患者さんがやってきた。
「そちらの椅子にかけて少々お待ちください」
「……そっか。分かった」
山田さんは渋々頷き、受付から一番近い場所にある椅子に腰かけた。
彼がこれほどまでに私を心配するのは、半年ほど前に私が交通事故にあったからだろう。歩道を歩いていた時、突っ込んできた車に撥ねらたのだ。
大きな怪我はなかったものの、事故のショックからか事故前後の記憶が曖昧になってしまっていた。三日ほど入院している間も山田さんは私を毎日見舞いに訪れ『困ったことがあればいつでも僕に言ってね』と温かい言葉をかけてくれた。
それからは『たまたま近くを通りかかったから』と病院からアパートまでの送迎を申し出てくれることもあった。
けれど、彼の厚意に甘えるわけにはいかないといつも丁重にお断りしていた。