【執着兄弟の溺愛シリーズ】内緒の三つ子を出産したら、執念で見つけ出した凄腕パイロットから重たい独占愛を刻み込まれる
事前に空港関係者の方から『今日皆さんの前でお話する氷室機長は、アストラルジェット航空で一番若く機長になられた優秀な方です』という説明があった。
抜群のルックスだけでなく仕事もできるなんて、非の打ちどころがなさ過ぎる。
 氷室さんは一通り園児たちに空港やパイロットの仕事の説明をした。その後、園児たちの質問の時間になった。
「質問ある人いますか?」
 氷室さんの言葉に園児たちが「はいっ!」と一斉に手を挙げる。
 当てられた子は大喜びで質問をする。
「パイロットになれていちばんうれしかったことはありますか?」
「乗客の皆さんを安全に目的地へ届けられた時が一番嬉しいです」
「きちょうさんとふくきちょうさんはどっちがえらいんですか?」
 その質問に氷室さんが「ははっ」と声を出して笑う。
その顔はどことなく子犬のような可愛さがある。そのお陰でちょっぴり緊張気味だった園児たちの緊張もほぐれたようだ。
「面白い質問だね。でも機長と副機長、どちらが偉いということはありません。この空港ではたくさんの人が働いています。キャビンアテンダント、整備士、グランドスタッフ……飛行機を安全に飛ばすために全員がワンチームになり協力し合っています」
 氷室さんは真剣な表情で答える。
「空港で働く人は、人の命を預かる責任を感じながら仕事をしています。だから、対等の関係……みんな同じぐらい偉いです」
 氷室さんの言葉に私は賛同して頷く。職種は違えど、保育士の私も子どもたちの成長を支えるために他の保育士とワンチームになって働いている。
 その後も質問タイムは続く。
「そのバッグのなか、なにがはいってるんですかぁ?」
「これ? じゃあ、今日は特別に見せるね。みんな、少し前においで」
 子どもたちは興味津々の様子で氷室さんをぐるりと取り囲む。
「前の子は後ろの子が見えるように少ししゃがんであげてね」
 子どもの扱いに慣れているのか、氷室さんは子どもたちに手でジェスチャーを出しつつ全員が見えるように配慮する。
「ええっと、これはマニュアル本。すごく重たいんだよ。持ってみる?」
「うわぁぁ! おもたい!」
 キャリーバッグの中身を紹介しつつ、氷室さんは丁寧に持ち物を説明していく。
「かたのきんのせんってどうして四ほんなの?」
「目の付け所がいいね。実は、三本が副機長で四本が機長なんだよ」
「そうなんだ!」
「二本と一本もあるから、あとで調べてごらん?」
 子どもたちとしっかりと視線を合わせて言葉を交わす氷室さんの真摯な態度に感心する。
 いつもは大騒ぎの子どもたちも、氷室さんの話を真剣な表情で聞いている。
私は少し離れた場所にしゃがみこみ、首にかけたデジタルカメラを構える。
 遠慮がちに撮っていると、私に気付いたのか「そばまでどうぞ」と氷室さんが促した。私は頭を下げてお礼を言い、ありがたくそうさえてもらった。
腕時計を確認すると、インタビューの終了時間が近付いていた。
あらかた質問が終わったタイミングで立ち上がろうとした瞬間、ここ最近の運動不足がたたったせいか、うっかりよろけた。
「わっ」
「――おっと」
 すると、小さく声を上げた私の背中を氷室さんが慌てて支えてくれた。
「大丈夫ですか?」
 心配そうに氷室さんが私の顔を覗き込む。
「あっ、す、すみません……。大丈夫です!」
「それならよかった」
 ふいにイケメンから微笑みかけられて、つい心臓が撥ねる。
 すると、一部始終を見ていたクラスのお調子者男子が「りんかせんせぇ、まっかなかおしてる~!」とからかうように叫んだ。
その瞬間、ドッと場が沸く。
「み、みんな! 静かにしようね!」
必死にその場を諫めようとするも、心臓はドクドクと大きな音を立てて鳴り続ける。
間近で見るイケメンの笑みに、危うく心臓を撃ち抜かれそうになってしまった。
って、ダメダメ、気軽に男性に気を許してはいけない。特に氷室さんのように顔が良くて愛想の良い人はなおさら警戒しなくてはならない。
平常心を取り戻そうと、私は小さく息を吐き出した。
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