【執着兄弟の溺愛シリーズ】内緒の三つ子を出産したら、執念で見つけ出した凄腕パイロットから重たい独占愛を刻み込まれる
事の発端は、一年前に遡る。
二十八歳を迎えるも、私には仕事柄出会いがなかった。そこで同僚の末藤成美に誘われて、初めて街コンに参加することにしたのだ。
街コンはオシャレなレストランを貸し切って行われ、時間の経過ごとに司会者が席替えを促し、男性が回転寿司のように回るスタイルだった。
一緒に来ていた成美は男性陣からモテモテで、彼女の前に移動した男性は皆分かりやすく目をハートにしていた。
背中まであるサラサラな黒髪ロングヘアにお人形のようにパッチリとした二重の瞳。背は低くて華奢。その存在すべてが愛らしくて可愛いのだ。
一方の私はいたって平凡な顔つきをしている。背丈も女性の平均ほどで特筆する点はこれといってない。
ただ昔から色素が薄い方で、肌は真っ白で、髪や瞳は焦げ茶色だ。その点だけは時々羨ましいと言われる。
その日は気合を入れて、前髪はシースルーバングにして背中まである髪を緩く巻きハーフアップにして臨んだ。
男性が移動してくるたびに必死に会話を繋げようと試みるも、短時間では相手がどういう人なのか分からず、どの人もピンッと来なかった。
フリータイムの時間になると、成美は大勢の男性に取り囲まれていた。
そこで声をかけてくれたのが一郎くんだった。会話は弾み、お互いの連絡先を交換して別れた。
それから、彼と連絡を取り合うようになった。一郎くんは黒縁眼鏡の真面目なサラリーマンだった。
奥手なせいで彼女はおろか女友達すらいないという彼に、私は親近感を持った。
それからは欠かさず連絡を取り合い、将来の話もした。
すでに他界しているが、私の両親は夫婦仲が良かった。ケンカをしているところは見たことがないし、自他ともに認めるおしどり夫婦だった。
そんな両親を見て育ったせいか、私は幼い頃から結婚願望が強かった。両親のように温かな家庭を築きたいという夢を叶えたい。
一郎くんに話すと『僕も結婚願望が強いんだ』『君となら素敵な家庭を築けそうだよ』と嬉しい言葉をかけてくれた。
けれど、土日休みだと言っていた彼とはタイミングが合わず、なかなか会うことは叶わなかった。
街コンから一か月後、ようやくふたりきりで食事に行くことになった。
『凛花ちゃんみたいな子と出会えて、僕は本当に幸せだよ』
 少し照れくさそうにしながらも、嬉しそうに微笑む一郎くん。
 まだ彼を心から好きという段階ではない。
 でも、一郎くんのような誠実な人とならうまくやっていけるかも……。
そんなことを考えている時、彼はスマホをテーブルに残してトイレへ行くために席を立った。
そのタイミングで彼の電話が鳴った。
『一郎くん、待っ――』
一郎くんに伝えようと咄嗟に彼のスマホを手に取った。
『愛海』
 画面に表示されているのは女性の名前だった。
 その時、違和感を覚えた。
 私と一郎くんは付き合っているわけではないし、彼にだって女友達くらいいるだろう。
でも、彼は女友達はいないって言っていたし……。
彼には姉妹がいるのかもしれないし、名前を見間違った可能性もある。
自分を必死に納得させてスマホをテーブルに戻そうすると、再びスマホが震えた。
【愛海:今日、一郎の家に泊まりに行くね。夕飯なにがいい?】
 ハートの絵文字のついたメッセージに、慌ててスマホをテーブルに戻した。
 まさか……。
 心臓がドクンドクンッと音を立てて震える。
 私はトイレから上機嫌で戻ってきた一郎くんに『彼女いるよね……?』とカマをかけて尋ねてみた。
『違うよ』と言ってくれることを期待していたものの、一郎くんの反応は予想外だった。
 彼は『あ、バレてた?』と開き直ったようににやりと笑った。
『実は長く付き合ってる彼女がいるんだけど、最近マンネリでさ。でも僕、凜花ちゃんのことも好きだから』
 どうやら私はあやうく一郎くんに二股を掛けられそうになっていたらしい。
 彼は反省の色もなく私を口説き落そうと、私の手に自身の手を重ね合わせた。瞬間、腕がゾッと粟立った。
 誠実そうな一郎くんの裏の顔を知ってショックを受けた私は、食事代を置き『二度と会いません』と告げて店を飛び出した。
 それからすぐに連絡先を消したという黒歴史があった。
 信じていた誠実そうな男性の裏切りに、私は深く傷付いた。
 とはいえ、相手の言うことを全て鵜呑みにして信じ込んでしまった自分にも非がある。
 その経験から、二度と騙されないように、男性に対してガードが固くなってしまったのだった。
< 3 / 70 >

この作品をシェア

pagetop