【執着兄弟の溺愛シリーズ】内緒の三つ子を出産したら、執念で見つけ出した凄腕パイロットから重たい独占愛を刻み込まれる
想定していたこととはいえ、あまりにもつらい事実に胸が痛む。
 すると、末藤さんは立ち上がり狼狽する俺の隣に腰掛けた。
「ショックを受けるのは無理ありません。私でよければ氷室さんの相談に乗りますよ?」
 顔を上げると末藤さんと目が合った。潤んだ瞳で見上げた後、彼女は俺に手を伸ばす。
「触るな」
 冷ややかに言い、俺は彼女の手を払いのけた。
「なっ……」
末藤さんは驚いたようにビクッと体を震わせる。
「やっぱり、全部君の仕業だったんだ?」
「え……? 氷室さんってば何言ってるんですか?」
 シラを切る彼女を俺は冷ややかに見つめる。
「今度は騙されない。凛花が君を友達だって言っていたから我慢してたんだ。でも、君は踏み越えてはいけないラインを超えた」
「ちょっ、何言って……」
「凛花に会えるまで、この三年間俺がどんな気持ちでいたか君に分からないだろう。それなのに、君はまた凛花と子どもたちを俺から取り上げるつもりか?」
「ちがっ」
「そんなこと絶対にさせない」
 俺は素早く立ち上がり、応接室を出た。
「ひ、氷室さん! 待ってくださいよぉ!」
 末藤さんは今にも泣きそうになりながら俺の後を付いてくる。俺は無視して職員が集まっている職員室へ足を向けた。
 扉を勢いよく開けると、職員が驚いたようにこちらに目を向けた。
「こんばんは。藍沢凛花の婚約者で晴翔と奏翔と琉翔の父の氷室翔真と申します。大事なお話があるのですが、園長先生はいらっしゃいますか?」
「はい、私が園長ですが」
 すると、奥にいた六十代ほどの男性がこちらへ歩み寄って来た。
「凛花先生の婚約者さんだって」
「どうしたんだろう」
 何事かと園長だけでなく他の保育士たちも俺の周りに集まってくる。
「早速ですが、これを聞いていただけますか?」 
 俺はポケットに入れていたスマホを取り出し、先程の応接室での末藤さんとの会話の録音を聞いてもらうことにした。
「これは、数分前の末藤さんとの会話です」
『実は、凛花……保育園の保護者と不倫してるんです』
 音声を流すと、園長を始め保育士が「これ、成美先生の声だ……」とざわつく。
『私でよければ氷室さんの相談に乗りますよ?』
 さらに猫撫で声で媚びを売る末藤さんに保育士たちは嫌悪の目を向ける。
「ねえ、ちょっとこれマズくない? 氷室さんって凛花先生の婚約者でしょ……?」
「だよねぇ。明らかに色目使ってるじゃん」
 保育士たちが囁き合うと、末藤さんが「違います!」と叫んだ。
「私はただ親切心で氷室さんに忠告しただけですから」
「忠告? 彼女は不倫などしていない。凛花がそんなことをしている証拠はあるのか?」
 すると、彼女は得意気に「あります!」と答えた。
「実は園ブログの――」
「ああ、もしかしてあのブログ? そのコメントを見てそう思ったってこと?」
 俺は末藤さんの言葉に被せるように言う。
「え……どうしてそれを……?」
 俺が知らないと思ったのか、末藤さんの目の下がぴくりと引きつる。
「実は、保育園で運用されているブログがあることを知り、息子たちの園での姿がみられるかもしれないと毎日欠かさず拝見していたんです。そこで、偶然これを見つけまして」
 俺はスクリーンショットに収めた凛花への誹謗中傷コメントを園長に見せた。
「コメントはすでに消されていますが、私のスマホにはすべての証拠が残されています。あまりにも悪質だったので、知り合いに依頼してすぐにIPアドレスを調べてもらいました。すると、書き込みをしているのが同一人物だと分かりました」
「そうでしたか! それで、犯人は分かったんですか?」
 園長の言葉に俺は小さく首を横に振った。残念ながらIPアドレスが分かったところで個人の特定はできない。
「そんな……」
 その場にいた全員が落胆してる中、末藤さんだけはどこかホッとしたような表情を浮かべた。
< 61 / 70 >

この作品をシェア

pagetop