【完結】婚約破棄×0日婚で逆転の幸せを掴んだら、生涯愛されました。


 元気に産まれてくることが、何より一番だからな。

「それにしても、四之宮がパパになる日が来るなんてな」

 寺巻にそう言われて、俺自身もそう言われて「確かにな」と呟く。 

「お前が結婚したって聞いた時もびっくりしたけどさ、子供が出来たって知った時はもっとびっくりしたけど……でもお前が幸せなら、俺はそれでいいかな思ってる」

 寺巻からそんなことを言われると、ちょっと照れる気もする。

「お前も幸せになれる人を見つけないとな」

 俺が寺巻にそう言うと、寺巻は「うるせー。余計なお世話だ」と俺を見る。

「……俺にもいつか、家族が出来るかな」

「出来るさ、きっと」

 寺巻は二人の家族を失った経験がある。だからこそ、寺巻にもいつか幸せになれる日が来るのを祈りたい。

「そういやさ、親父がさ」

「ん?」

 寺巻が静かに口を開き始める。

「もう俺のこと、思い出せないんだ」

「……そうか」

 寺巻の親父さん、いよいよ思い出せなくなったのか……。

「親父は時々、思い出してくれたんだよ、俺が息子だって。……思い出してくれてたんだけどさ、もう二度と思い出してくれないかもしれない」

「……それは辛いな」

「親父が俺のこと思い出せなくなったら、もう二度と家族との記憶はなくなるな」 
  
 寺巻がそう話してくれた時、寺巻の表情はとても寂しそうだった。

「家族の、記憶か……」

「俺の家族はさ、唯一親父だけなんだよもう。 そんな親父に忘れられて、思い出してもらえなくなったら、俺は何を生き甲斐にすればいいんだろうな」

 寺巻の家族は、もういなくなるに等しい。 

「……悪い。余計なこと言った」

 だからこそ、家族の記憶がなくなったら、寺巻は孤独になる。
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