あの夏、君だけを見ていた

16話 パーカー

明らかに顔が白い。
まじで心配だから。倒れたら困るから。
……君に、何かあったら困るから。

「これ、着とけば」
休憩室に入って紬ちゃんにパーカーを投げる。

思わず受け取った紬ちゃんが、「え?」と聞いてくる。
……なに、その顔で俺が気付かないとでも思った?

「エアコン効きすぎて寒いんじゃない?」
「顔色悪いよ」

「大丈夫」
真っ白な顔で言われても、何の説得力も無い。

「帰りなよ」

「……でも、今日2つ学科受けたら、来週仮免試験受けられるから」

「じゃあ、それ着てて」
「着るか、帰るか、どっちか」

……多分、着ないでしょ。帰りなよ。

「……じゃあ着る。ありがと」
紬ちゃんが俺のパーカーを着るのを見て、変な気持ちになる。
……ああ、好きな子に服貸すのって、こんな気持ちになるんだ。

パーカーを着た紬ちゃんが固まる。
……分かってるよ、脱ぐでしょ?
彼氏に、悪いことしてるような気になったんでしょ?

「あ、エアコンの温度少し上げてもいいっすか?」
スタッフさんを捕まえて声を掛ける。

「これで俺のパーカーは要らないか」
温度を上げたのを確認して、紬ちゃんが脱いだパーカーを回収する。

「ごめん、ありがと」

紬ちゃんは泣きそうな顔をしていて、見ていられなかった。
手を振って休憩室を出た後、パーカーをロッカーに投げ入れた。
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