ゆびきりげんまん
ここへ葵唯と来る時はいつもデザートやサイドメニューばかりを頼んでいたからこうしてちゃんと見るのは初めてに近かった。
「……ハンバーグ、ですかね」
「チーズハンバーグ?」
「え、あ、はい。チーズハンバーグがいいです」
「おっけー、僕はどうしよっかなぁ…」
ペラッとゆっくりメニューを開く神崎さんを横目に窓の外へと視線を向けた。
窓際から少し離れた席で少し見えにくいけど、大きな窓からはしっかりと外が見える。
……今日は、いつもの黒い車は見当たらない。
ホッとして再び視線を前に向けると神崎さんはメニューではなく私を見つめていた。
「…………車、いるの?」
いつもより低い声に動揺して、言葉が詰まってしまって上手く声が出なかった。
「いえ…、今日は…」
時折見せるこの雰囲気だけはどうにも慣れない。
まるで、知らない人みたいにゾクリとさせるような雰囲気を彼はたまに出す。
「そっか」
そして、次の瞬間にはいつもの柔らかい雰囲気に戻り「僕もハンバーグにする」とメニュー表が置かれていた前の呼び出しボタンを押した。