ゆびきりげんまん
「…え、これって、」
「文化祭で出してたやつです。途中で、仕事かなぁって思ったので神崎さんの分も取っといたんです」
驚いたのか目を見開き両手にラッピング袋を持ったまま固まっている。
なんだか今日は今まで見たことがない神崎さんを見れている気がして嬉しい。
「こ、れ…つむが作ったの?」
「まぁ、そうですね。…あっ、人の手作りとか苦手でしたか?」
「えっ?あ、いや、つむのなら大丈夫」
不意にそんな事を言われてドキッとしてしまった。
「……昔もね、バレンタインの時につむが手作りのチョコレートくれたんだよ」
「え、」
「それ以来だね」
私の知らない昔を思い出して語る神崎さんの表情はものすごく穏やかで、切なく微笑んでいて。
これが演技なら何かの賞が取れるんじゃないかって思ってしまうくらい現実的だった。
私は、なんで神崎さんの記憶がないんだろう。
神崎さんは私から貰った2つのラッピング袋を大事そうに持ち直して文化祭の話が聞かせてほしいとベンチに座った。