Dying music 〜音楽を染め上げろ 高2編~
土曜日
電車に乗りながら今日のタイテを確認する。今日の出番は2件。Cyanに関してはコラボレーションステージだ。
実は、Cyanとしても変化があった。
最近、外部のステージにも上がるようになったんだ。マスターのところやコードについて行って歌っている。ギタリストのナツとしても、バンドのサポートも増やし始めた。来週もマスターの伝手で、セッション会に呼ばれている。数は多くない。それでも、場所ごとに違う空気を吸って、経験を積んで、自分の成長に繋げたいと思ったんだ。
店の裏口を開けると、いつもの機材の匂いが鼻をくすぐった。
「おはようございます。」
いつもどおり裏口から店内に入り、師匠に挨拶をする。師匠はタオルで手を拭きながらこちらを見た。
「アイツもう来てるぞ。」
「早くないっすか。」
今日の入りは18時半。時計を見ると、まだ16時半だ。え、今日の入り時間ちゃんと伝えたんだけれど。
「お前の演奏が聞きたくて早く来たんだと。」
んだそれ。そう思いつつ、「わかりました」と返事をし、Aスタへ向う。
「お、Cyanお疲れ~。」
分厚い防音扉を開けると、ひらひらとコードが手を振る。
「お疲れ様です。それと、入り早すぎです」
荷物を床に置きながらそう言う。コードは春から東京の大学に通っている。文学部らしいが、それ以外はよく分からない。髪も染め、今日もインナーのホワイトがよく目立っている。前からチャラチャラしていたが、大学生になってからさらにホスト味が増した。
「久しぶりにギターやるって聞いたから見よっかなーって。」
コードは悪びれもせず笑った。
「見るなら裏からにしてくださいね。あと名前呼ぶのも禁止で。」
「厳しっ!」
軽口を交わしながらギターをセッティングする。
今日はコードとだけではない。その前にバンドさんとのギターコラボが入っている。しかも今回は難曲だ。曲調に合わせて機材も普段使わない種類を使うことになっているため、念入りに準備を行わなければならない。練習後、下でバンドさんと合流して一通りリハーサルや最終打ち合わせを行う。
「師匠から呼び込みあったんで行きますね。」
「頑張れよ。後ろで見てるね。」
「うん。行ってくる。」
ギターを抱え、ステージに向かった。