Dying music 〜音楽を染め上げろ 高2編~
バッタバッタとスタジオに戻った。
バンドさんと話し込んでいたら、気づけば時間がギリギリだ。いや、時計はちゃんと見ていた。見ていたけれど、あの空気を途中で切るのはどうしても嫌だった。
「お疲れぃ!いやぁ、えぐかったね。特にラスト!盛り上がる前にかましたヘッドピーン、あれ最高だね」
慌てて荷物を抱えている僕とは対照的に、コードは余裕の笑みで感想をつらつらと述べてくる。 こっちは着替えと声出しと機材チェックを全部合わせて、準備時間がもう1時間切ってるんだ。
「あー…何かやっておくことある?」
僕の焦りを察したのか、コードが聞いてきた。
「マイクと音源のセッティングをお願い致します。あと、師匠に出番までの時間確認してもらえると助かります。」
「OK~」
コードがスタジオを出ていく。僕は急いで衣装に着替え始めた。
さっきまでのフレアパンツとメッシュニットから、ワイドデニムとオーバーサイズのパーカーへ。 シークレットブーツに履き替えると、身長がさらに5㎝盛られる。 鏡に映る自分は、さっきとはまるで別人だ。
リップロール、発声、音階確認。 一通りのウォームアップを行う。だんだんと喉の奥が温まっていく感覚を感じる。
♪~🎶♬~
いいところまで温まったら 歌う曲を軽くなぞる。 うん、悪くない。今日は調子がいいかも。
本番10分前。
そろそろ裏へ移動する時間だ。 通路に入ると、後ろからコードが肩を叩いてきた。
「2曲目、ラスサビ、ハモリ入れていい?」
……またか。
コードはこういう突拍子もないことを平気で投げてくる。 事前練習は意味あるのか。
「上ハモですか下ハモですか?」
「うーん……そのときの気分で!」
ふざけんなよマジで。
「だから、アレンジ入れたいなら練習段階で言ってください。ミスったらどうするつもりなんですか。アンタはいいかもしれないけれど、こっちは毎回ヒヤヒヤしてるんですよ。」
「でもさ、そう言って本番ミスったことないじゃん」
ちっ。
分かりやすく舌打ちが出る。 確かに、コードと歌う回数が増えるほど、何をしてくるかは読めるようになってきた。 でも、毎回これをされるのは心臓に悪い。 この前なんて急に原キーで歌い出したんだぞ。合わせる身にもなれ。
そんな不満を胸の中でぶつぶつ言いながら、ステージ裏で待機する。
「お前ら出番だ」
「「はい」」
師匠の声が響いた瞬間、空気が一気に張り詰める。 僕らはステージへと駆け上がった。