君と終わった街で
デスクの上。

飲みかけの缶コーヒー。

残業中の静かなオフィス。

洸太はパソコンへ向けていた視線を止める。

画面に表示された名前を見た瞬間。

自然と口元が少し緩む。

文姫からだった。

でも。

メッセージを開いた瞬間。

その表情が、静かに止まる。

『この前、洸太に可能性があるようなこと言ったけど』

洸太の指が止まる。

嫌な予感がした。

胸の奥が、ゆっくり冷えていく。

読み進める。

『あれは熱があって、少しおかしくなってたみたい』

『やっぱり、洸太のことを恋人としては見れない』

その瞬間。

時間が止まったみたいだった。

オフィスの音が、少し遠くなる。

洸太は無言のまま画面を見つめる。

意味が分からなかった。

いや。

分かりたくなかった。

数日前。

あの部屋で。

文姫は確かに、自分を見ていた。

あの目も。

触れてきた手も。

全部、勘違いだったのか。

洸太は小さく息を吐く。

最後の一文へ視線が落ちる。

『あなたをちゃんと見てくれる人がいるんだから、その子を大事にしてね』

その文章を見た瞬間。

洸太の頭に、一人の顔が浮かぶ。

桃花だった。

静かに、理解してしまう。

――会ったんだ。

洸太はスマホを握る。

指先に少し力が入る。

その時。

「先輩?」

声がして、洸太は顔を上げる。

桃花だった。

資料を持ったまま、少し不思議そうな顔でこちらを見ている。

でも次の瞬間。

洸太の表情を見て、空気が変わる。

桃花の顔から笑みが消えた。

洸太は何も言わない。

ただ静かにスマホ画面を伏せる。

でも桃花は気づいてしまった。

その空気だけで。

何が起きたのかを。


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