君と終わった街で
洸太は文姫を抱きしめたまま、小さく笑った。
それから、不意に問いかける。
「……熱ないよな?」
文姫は一瞬きょとんとして。
次の瞬間、小さく吹き出した。
涙でぐしゃぐしゃの顔のまま、少し笑う。
「……うん」
洸太は安心したみたいに目を閉じる。
「よかった」
「また熱でおかしくなってるとか言われたら、立ち直れねぇ」
文姫は思わず洸太の胸を軽く叩く。
「言わない……」
その声が泣き笑いみたいになって、二人で少し笑った。
洸太は文姫の髪へ顔を埋めるみたいにしながら、掠れた声で言う。
「俺も」
少し間が空く。
それから。
「大大大好きだ、文姫」
その言葉に、文姫の胸がいっぱいになる。
こんなふうに真っ直ぐ気持ちをぶつけてくる人を、自分はずっと怖がっていた。
でも今は違う。
怖いんじゃない。
嬉しかった。
どうしようもないくらい。
文姫は洸太の服を掴みながら、小さく笑う。
「……私も」
涙がまた零れる。
でも今度は、苦しくなかった。
「私も、大大大好き」
洸太が少し笑う。
「小学生みたいな告白だな」
「洸太が先」
「うるさい」
そんなやり取りが、おかしくて。
二人で笑う。
その瞬間だった。
文姫はふと気づく。
耳に、街の音が戻ってきていた。
遠くを走るバイクの音。
夏の虫の鳴き声。
近くの自販機の低い駆動音。
うるさいくらい、ちゃんと聞こえる。
見上げた街灯は、柔らかいオレンジ色で。
夜の街は、ちゃんと色づいていた。
ついさっきまで。
世界は灰色だったのに。
文姫は洸太の胸へ頬を寄せたまま、ぼんやり思う。
高校の頃。
怖かったのは、洸太じゃなかった。
真っ直ぐ“好き”を伝えてくれる洸太を、自分が受け止めきれるのか怖かったんだ。
同じ熱量で好きになれるのか、不安だった。
期待させて。
いつか傷つけてしまうかもしれない。
それが怖くて、逃げていた。
でも。
本当はずっと。
ずっと前から。
自分も洸太のことが、大好きだったんだ。
文姫はその事実に気づいて、小さく苦笑いする。
こんな簡単なことに、十年以上もかかってしまった。
でも。
洸太は待っていてくれた。
ずっと。
馬鹿みたいに真っ直ぐなまま。
文姫は洸太へ気づかれないように、そっと目を閉じる。
――ありがとう、洸太。
――私を、ずっと好きでいてくれて。
それから、不意に問いかける。
「……熱ないよな?」
文姫は一瞬きょとんとして。
次の瞬間、小さく吹き出した。
涙でぐしゃぐしゃの顔のまま、少し笑う。
「……うん」
洸太は安心したみたいに目を閉じる。
「よかった」
「また熱でおかしくなってるとか言われたら、立ち直れねぇ」
文姫は思わず洸太の胸を軽く叩く。
「言わない……」
その声が泣き笑いみたいになって、二人で少し笑った。
洸太は文姫の髪へ顔を埋めるみたいにしながら、掠れた声で言う。
「俺も」
少し間が空く。
それから。
「大大大好きだ、文姫」
その言葉に、文姫の胸がいっぱいになる。
こんなふうに真っ直ぐ気持ちをぶつけてくる人を、自分はずっと怖がっていた。
でも今は違う。
怖いんじゃない。
嬉しかった。
どうしようもないくらい。
文姫は洸太の服を掴みながら、小さく笑う。
「……私も」
涙がまた零れる。
でも今度は、苦しくなかった。
「私も、大大大好き」
洸太が少し笑う。
「小学生みたいな告白だな」
「洸太が先」
「うるさい」
そんなやり取りが、おかしくて。
二人で笑う。
その瞬間だった。
文姫はふと気づく。
耳に、街の音が戻ってきていた。
遠くを走るバイクの音。
夏の虫の鳴き声。
近くの自販機の低い駆動音。
うるさいくらい、ちゃんと聞こえる。
見上げた街灯は、柔らかいオレンジ色で。
夜の街は、ちゃんと色づいていた。
ついさっきまで。
世界は灰色だったのに。
文姫は洸太の胸へ頬を寄せたまま、ぼんやり思う。
高校の頃。
怖かったのは、洸太じゃなかった。
真っ直ぐ“好き”を伝えてくれる洸太を、自分が受け止めきれるのか怖かったんだ。
同じ熱量で好きになれるのか、不安だった。
期待させて。
いつか傷つけてしまうかもしれない。
それが怖くて、逃げていた。
でも。
本当はずっと。
ずっと前から。
自分も洸太のことが、大好きだったんだ。
文姫はその事実に気づいて、小さく苦笑いする。
こんな簡単なことに、十年以上もかかってしまった。
でも。
洸太は待っていてくれた。
ずっと。
馬鹿みたいに真っ直ぐなまま。
文姫は洸太へ気づかれないように、そっと目を閉じる。
――ありがとう、洸太。
――私を、ずっと好きでいてくれて。