私の恋を探してください
「……だからって……研究室に来るかねぇ、汐見さんや」
「……も、申し訳ありません……。……他に、思いつかなくて……」
鳥居教授は、大きな椅子の背もたれに沈むように寄りかかって、あきれたように言う。
急に押し掛けてしまった私達は、快く――とまではいかないが、それでも、部屋の中に入る事を許してもらえた。
「まあ、懐かしの顔が見られたから、良しとするけど――千谷沢、いつ性転換したんだい?」
「……してません」
「冗談だから、拗ねなくて良いよ。お前さん、昔から女顔だったしねぇ。似合ってる、似合ってる」
ハハハ、と、続けて笑われ、千谷沢さんは、しかめっ面になってしまった。
「――で、進捗報告だったっけ?どうぞどうぞ。こっちは気にせず、奥川、話を進めて」
「……あ、ありがとうございます」
苦笑いしながら、奥川さんはうなづくと、向かいのソファに座っていた私を見やる。
「進捗――というか、今後の方向を伺いたいんだ、汐見さん」
「……方向……ですか……」
「うん。おばあ様の初恋の人を探して――その方に、会いに来てもらいたいのかな?それとも、どこかで会う場を作るのかな?」
「……あ、いえ……すみません、探す事で頭がいっぱいで……何も……」
私は、肩を縮こませ、頭を下げた。
――正直、会わせたいと思っているだけで、具体的な事なんて、考えてもいなかった。
「そっか。……で、申し訳無いんだけど……ちょっと、調査が止まってるんだよね」
「え」
「学校の卒業生を当たってはいるんだけど――何せ、おばあ様の通っていた学校って、かなりの大所帯だったからさ、まだ、十分の一もいかないんだよね」
「――え」
奥川さんは、眉を下げ、持っていた手帳を開いた。
「その――”ヨシさん”っていう方が、おばあ様と同い年か、上か下か――それに、不謹慎だけど、ご存命かどうかも不明なもので、キミの方で、何か知っている事があれば、と、思ってさ」
「――……あ」
私は、そう言われて、ようやく気づく。
――そうだ。
――おばあ様と同じ時期に学生だったという事は、もう、相当な御歳のはず。
――最悪、亡くなっている可能性もあるのだ。
……でも。
「――……叶うのであれば、おばあ様が入っている施設に、いらしていただきたいです」
そう、背筋を伸ばし、真っ直ぐに奥川さんと千谷沢を見つめた。
彼等は、お互いに目配せをすると、深くうなづく。
「承知しました」
そして、奥川さんは、ニッコリと――ちょっとだけ、何か含んだような笑みを浮かべる。
「手放しで任せろとは言い切れないが――まあ、どんな事があっても、最後まで投げたりしねぇから、そこは安心しろ」
千谷沢さんは、そう言って、私の頭を、ポン、と、叩いた。
――それだけで――心臓が跳ね上がってしまうのは、何故だろう。
「……よ、よろしくお願いします」
私は、真っ赤になってしまっただろう顔を隠すように、頭を下げた。
「……も、申し訳ありません……。……他に、思いつかなくて……」
鳥居教授は、大きな椅子の背もたれに沈むように寄りかかって、あきれたように言う。
急に押し掛けてしまった私達は、快く――とまではいかないが、それでも、部屋の中に入る事を許してもらえた。
「まあ、懐かしの顔が見られたから、良しとするけど――千谷沢、いつ性転換したんだい?」
「……してません」
「冗談だから、拗ねなくて良いよ。お前さん、昔から女顔だったしねぇ。似合ってる、似合ってる」
ハハハ、と、続けて笑われ、千谷沢さんは、しかめっ面になってしまった。
「――で、進捗報告だったっけ?どうぞどうぞ。こっちは気にせず、奥川、話を進めて」
「……あ、ありがとうございます」
苦笑いしながら、奥川さんはうなづくと、向かいのソファに座っていた私を見やる。
「進捗――というか、今後の方向を伺いたいんだ、汐見さん」
「……方向……ですか……」
「うん。おばあ様の初恋の人を探して――その方に、会いに来てもらいたいのかな?それとも、どこかで会う場を作るのかな?」
「……あ、いえ……すみません、探す事で頭がいっぱいで……何も……」
私は、肩を縮こませ、頭を下げた。
――正直、会わせたいと思っているだけで、具体的な事なんて、考えてもいなかった。
「そっか。……で、申し訳無いんだけど……ちょっと、調査が止まってるんだよね」
「え」
「学校の卒業生を当たってはいるんだけど――何せ、おばあ様の通っていた学校って、かなりの大所帯だったからさ、まだ、十分の一もいかないんだよね」
「――え」
奥川さんは、眉を下げ、持っていた手帳を開いた。
「その――”ヨシさん”っていう方が、おばあ様と同い年か、上か下か――それに、不謹慎だけど、ご存命かどうかも不明なもので、キミの方で、何か知っている事があれば、と、思ってさ」
「――……あ」
私は、そう言われて、ようやく気づく。
――そうだ。
――おばあ様と同じ時期に学生だったという事は、もう、相当な御歳のはず。
――最悪、亡くなっている可能性もあるのだ。
……でも。
「――……叶うのであれば、おばあ様が入っている施設に、いらしていただきたいです」
そう、背筋を伸ばし、真っ直ぐに奥川さんと千谷沢を見つめた。
彼等は、お互いに目配せをすると、深くうなづく。
「承知しました」
そして、奥川さんは、ニッコリと――ちょっとだけ、何か含んだような笑みを浮かべる。
「手放しで任せろとは言い切れないが――まあ、どんな事があっても、最後まで投げたりしねぇから、そこは安心しろ」
千谷沢さんは、そう言って、私の頭を、ポン、と、叩いた。
――それだけで――心臓が跳ね上がってしまうのは、何故だろう。
「……よ、よろしくお願いします」
私は、真っ赤になってしまっただろう顔を隠すように、頭を下げた。