私の恋を探してください
3.私には、それが普通なのだから、仕方ない
鳥居教授の研究室で、今後の方針が決まり、私はソファから腰を上げた。
「――今日は、わざわざお越しいただき、ありがとうございました」
そう言って、深く頭を下げると、視線を感じ、顔を上げる。
目の前の探偵二人は、微妙な表情だ。
「……あ、あの……?」
「――いや……汐見さんって、その口調、デフォルト?」
少々気まずそうに、奥川さんが尋ねるが、私は首をかしげる。
「……えっと……何か、不都合が……?」
「そういう訳じゃねぇよ。……ただ、何っつーか、育ちの良さが出てるっつーか」
千谷沢さんは、頭をかきながら、苦笑いで言う。
「……は?」
――育ち?
――ただの、田舎出身ですが?
目を丸くした私に、鳥居教授が楽しそうに声をかけた。
「いや、汐見さんは、コレが普通。ボクは最初、どこの営業さんかと思っちゃったもんねぇ」
「――すみません」
幼い頃から、おばあ様と話す事が多かったせいか、年不相応だという事は認識している。
「別に、悪いってンじゃねぇ。――ちょっと、居心地が悪かっただけだ」
「千谷は、昔を思い出すからね」
「――……えっと……?」
私がキョトンと返すと、奥川さんは、苦笑いで千谷沢さんの頭を軽く叩いた。
「おい」
「いや、ゴメン。こっちの話」
「……はあ……」
あきらかにごまかしたような笑みに、何だか、もどかしさを感じてしまう。
――けれど、この人達と、私は、言わば雇用関係。
必要以上に距離は縮めない方が良いのだろう。
「じゃあ、引き続き、調査の方は進めるので。後、汐見さんの方に状況の変化があれば、すぐに教えてね。緊急で対応策を考えるから」
「――……ハ、ハイ」
奥川さんの、真剣な口調に――それは、おばあ様の容態に変化があったら、という事なのだと気づき、一気に緊張してしまう。
本当は、無い方が良いのだろうけれど……万が一、という場合の事も考えてくれているのだ。
そう思うと、私自身も、もっと覚悟を決めた方が良いのかもしれない。
「おや、汐見さん、時間は大丈夫かい?」
「――……え?……あっ……‼」
鳥居教授に言われ、我に返る。
研究室の壁掛け時計を見やれば、既に六時を過ぎている。
私は、急いで皆さんに頭を下げると、ドアを開けて飛び出し――思い切り何かにぶつかった。
「――……痛ってぇー……って、あれ、汐見さん?」
顔を上げれば、体格の良いスーツ姿の男性が、私を見下ろしていた。
「もっ……申し訳ありません、町田先生!!」
准教授の町田先生は、鳥居教授の元にいる研究者。
私が、慌てて頭を下げると、軽く、ポンポン、と叩かれる。
「大丈夫、大丈夫。ビックリしただけだから」
「――……は、はあ……」
この人は、何かにつけ、こうやって頭や背中を叩いたり肩を抱いたりと、距離が近いので、少々苦手だ。
――でも、よく考えたら、千谷沢さんも、同じようにしていた。
――なら――二人の違いは……何なのだろう。
私が、意識を別方向に向けていると、鳥居教授は飄々と町田先生に言った。
「どうかしたの、町田くん?」
「どうかした、じゃないですよ、教授!また事務方に怒られたじゃないですか!申請書、ちゃんと出してくださいよ!今回も、俺が書いたんですからね!」
そう言いながら、彼は、ズカズカと部屋の中に入り――ソファに座っている探偵二人に、ようやく気がつく。
「……あれ……珍しい。お客様だったんですか」
「ああ、うん。キミが来る前に卒業したボクの生徒」
「――へえ」
町田先生は、――千谷沢さんを見やると、目を見開く。
そして、彼の目の前のソファに座ると、のぞき込んだ。
「初めまして、町田です。キミみたいな美人がいたなら、もう少し早く、こっちの大学に来れば良かったなー」
「……ハア?」
町田先生は、女装した千谷沢さんを、完全に女性だと思っているようだ。
千谷沢さんは、思い切り眉を寄せると、奥川さんを見上げた。
「――今日は、わざわざお越しいただき、ありがとうございました」
そう言って、深く頭を下げると、視線を感じ、顔を上げる。
目の前の探偵二人は、微妙な表情だ。
「……あ、あの……?」
「――いや……汐見さんって、その口調、デフォルト?」
少々気まずそうに、奥川さんが尋ねるが、私は首をかしげる。
「……えっと……何か、不都合が……?」
「そういう訳じゃねぇよ。……ただ、何っつーか、育ちの良さが出てるっつーか」
千谷沢さんは、頭をかきながら、苦笑いで言う。
「……は?」
――育ち?
――ただの、田舎出身ですが?
目を丸くした私に、鳥居教授が楽しそうに声をかけた。
「いや、汐見さんは、コレが普通。ボクは最初、どこの営業さんかと思っちゃったもんねぇ」
「――すみません」
幼い頃から、おばあ様と話す事が多かったせいか、年不相応だという事は認識している。
「別に、悪いってンじゃねぇ。――ちょっと、居心地が悪かっただけだ」
「千谷は、昔を思い出すからね」
「――……えっと……?」
私がキョトンと返すと、奥川さんは、苦笑いで千谷沢さんの頭を軽く叩いた。
「おい」
「いや、ゴメン。こっちの話」
「……はあ……」
あきらかにごまかしたような笑みに、何だか、もどかしさを感じてしまう。
――けれど、この人達と、私は、言わば雇用関係。
必要以上に距離は縮めない方が良いのだろう。
「じゃあ、引き続き、調査の方は進めるので。後、汐見さんの方に状況の変化があれば、すぐに教えてね。緊急で対応策を考えるから」
「――……ハ、ハイ」
奥川さんの、真剣な口調に――それは、おばあ様の容態に変化があったら、という事なのだと気づき、一気に緊張してしまう。
本当は、無い方が良いのだろうけれど……万が一、という場合の事も考えてくれているのだ。
そう思うと、私自身も、もっと覚悟を決めた方が良いのかもしれない。
「おや、汐見さん、時間は大丈夫かい?」
「――……え?……あっ……‼」
鳥居教授に言われ、我に返る。
研究室の壁掛け時計を見やれば、既に六時を過ぎている。
私は、急いで皆さんに頭を下げると、ドアを開けて飛び出し――思い切り何かにぶつかった。
「――……痛ってぇー……って、あれ、汐見さん?」
顔を上げれば、体格の良いスーツ姿の男性が、私を見下ろしていた。
「もっ……申し訳ありません、町田先生!!」
准教授の町田先生は、鳥居教授の元にいる研究者。
私が、慌てて頭を下げると、軽く、ポンポン、と叩かれる。
「大丈夫、大丈夫。ビックリしただけだから」
「――……は、はあ……」
この人は、何かにつけ、こうやって頭や背中を叩いたり肩を抱いたりと、距離が近いので、少々苦手だ。
――でも、よく考えたら、千谷沢さんも、同じようにしていた。
――なら――二人の違いは……何なのだろう。
私が、意識を別方向に向けていると、鳥居教授は飄々と町田先生に言った。
「どうかしたの、町田くん?」
「どうかした、じゃないですよ、教授!また事務方に怒られたじゃないですか!申請書、ちゃんと出してくださいよ!今回も、俺が書いたんですからね!」
そう言いながら、彼は、ズカズカと部屋の中に入り――ソファに座っている探偵二人に、ようやく気がつく。
「……あれ……珍しい。お客様だったんですか」
「ああ、うん。キミが来る前に卒業したボクの生徒」
「――へえ」
町田先生は、――千谷沢さんを見やると、目を見開く。
そして、彼の目の前のソファに座ると、のぞき込んだ。
「初めまして、町田です。キミみたいな美人がいたなら、もう少し早く、こっちの大学に来れば良かったなー」
「……ハア?」
町田先生は、女装した千谷沢さんを、完全に女性だと思っているようだ。
千谷沢さんは、思い切り眉を寄せると、奥川さんを見上げた。