私の恋を探してください
 ――時刻は、午後六時二十分。

 電車には、まだ、間に合う。
 でも、バスが無理なので、兄さんには、迎えに来てもらわないといけない。
 ――まあ、嫌な顔をされるだろうけれど。

「で、では、失礼いたします」

「あ、待って、汐見さん」

「――え」

 踵を返す私を、奥川さんが引き留めた。
 私は、あせりながらも、彼の言葉を待つ。

「僕等、車で来てるんだよ。送ろうか」

「――……えっと……え、い、いえっ!とんでもない距離なんですよ⁉」

 そんな軽い感じで、ちょっとそこまで、ではない。
 車は――高速使っても、一時間以上。それも、村に直接乗り入れる訳ではないから、結局、同じくらいの時間がかかるのだ。
 慌てる私に、奥川さんは穏やかに続けた。
「それに、もし、できるなら、おばあ様のいる施設にも行きたいと思ってさ」
「――え」
「面会が可能なら、だけど。直接お話したら、何かヒントが聞けるかもしれないし」
 私は、少しだけ戸惑う。
「……あ、あの……私の依頼は……おばあ様には、秘密なんです……」
 ――ただ、私が、弱っていくおばあ様を元気づけられれば、と、勝手に決めた事で――家族どころか、本人にだって内緒なのだ。
 けれど、奥川さんは、平然とうなづいた。
「うん、でもさ、依頼内容は話さなくても――キミの知り合いって(てい)でどうかな?」
「――……でも……おばあ様の容態が、どうかは……」
 施設は、医療機関が併設している訳ではないので、もし、行った時に入院していたなんて言ったら、隣のA町まで行かなければならないのだ。

「琴子、迷ってるヒマあるのかよ」

 すると、千谷沢さんが、そう鋭く割って入ってきて、私は彼を見やった。
「……でも……」
「でも、じゃねぇ。一刻も早く見つけたいんじゃねぇのかよ」
「――……っ……」
 その言葉に――彼等に依頼した時の気持ちを思い出す。

 ――初恋の人に、会わせてあげたい。

 ――それが、私を大事にしてくれたおばあ様に――おそらく、最期にできる祖母孝行。

 私は、奥川さんに、頭を下げる。

「――かなり、遠い道のりになりますが、よろしくお願いします」

「ハイ。承りました」

 奥川さんは、にこやかに、うなづいてくれた。
 そして、千谷沢さんと三人で鳥居教授の研究室(へや)を後にしたのだった。
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