私の恋を探してください
 そこから村に入り、集落の入り口まで約三十分程。
 私は、ハンドルを握っている奥川さんに言った。

「あ、あの……もう、ここで結構ですので」

「――え?」

「何言ってんだ、琴子。家の前まで送るぞ」

 千谷沢さんは、肩越しに振り返ると、しかめっ面を見せるが、私は首を振る。
「いえ、構いません」
「ダメです。真っ暗でしょ、危ないよ」
「奥川さん」
「颯介、構わねぇ。どうせ、ナビに住所入れてんだろ。行け」
「千谷沢さん!」
 問答無用で車は進む。
 私は、自分が徐々に真っ青になっていくのを感じた。

 ――どうしよう……。

 ――……どうしたら……。

「琴子」

「え」

 すると、千谷沢さんが、前を見たまま言った。

「何も気にするな。オレも颯介も、上手いコトやれるから」

「……でも……」

「大丈夫。おばあ様にも言ったように、大学の先輩って事で通すし、依頼内容とか、絶対に言わないから」

「……奥川さん……」

 私は、うつむいて首を振る。

「ダメです。……もう、お二人が姿を見せた時点で、不快な思いをさせるのは、目に見えているんです」

「大丈夫だから。――僕等、仕事柄、そういうのは慣れてるよ。警察の時だって、制服着ているだけで門前払いだった時もあったし」

 奥川さんは、穏やかに、なだめるように言うと、そのままスピードを落とさず進み――ついに、家の前に着いてしまった。




「……ここで合ってる……よね?」

 門の前で車を停めると、奥川さんは、少々たじろぎながら私に尋ねた。

「ハイ」

「……デケェ家だな」

 千谷沢さんも、圧倒されたように車の窓越しに家を見上げる。
 田舎の農家の住居など、どこもこんなもので、私には当然なのだけれど。
 探偵二人にとっては、見慣れないものなのだろう。

「――では、ありがとうございました」

「あ、汐見さん。一応、僕等も挨拶していくよ」

「――え……⁉」

 ドアを開けて降りようとした私は、ギョッとして振り返る。

 ――何を言い出すの!
 ――早く、逃げないと!

 私は、慌てて首を振るが、それに構わず、彼等は車を降りる。
 その音が聞こえたのか、玄関の明かりがつくと、勢いよく戸が開き、父親の怒鳴り声が響き渡った。
< 19 / 30 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop